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学生が見つけた有馬温泉の魅力

兵庫県の有馬温泉観光協会が大学生の視点で温泉の魅力を情報発信するパンフレットを制作した。「卒業旅行」と銘打ち、1万5千部を印刷し関西、中部、中国地方の大学生協で配布している。観光協会の弓削次郎さん(三ツ森常務)、増田陽平さん(ねぎや取締役)、近畿大学経営学部3回生の志摩直人さん、市田尚子さん、松井恵美さんに話を聞いた。

「ゆけむり大学」機にパンフ作成 卒業旅行アピール

―大学生が有馬温泉の卒業旅行のパンフレットを造られた経緯を教えてください。

弓削 有馬温泉では昨年8月30日―9月12日の14日間、大阪音楽大学、近畿大学、神戸芸術工科大学、武庫川女子大学の4つの大学とコラボレーションし、交流型のイベント「有馬ゆけむり大学」を実施しました。

期間中、毎日平均50人の学生が音楽やデザイン、スポーツを手段に、観光客と地元資源、地域の人たちを結びつけ、温泉街に楽しみを創る役割を果たしてくれました。この時、全体をとりまとめてくれたのが近畿大学経営学部の廣田章光ゼミの学生です。

増田 大阪音楽大生は本格的な音楽の演奏、武庫川女子大生がコーラスや音楽劇、神戸芸術工科大生がデザインやツイッターでの情報発信というようにそれぞれ得意分野を担当し、有馬を盛り上げてくれました。

志摩 学生スタッフだけで約150人はいて、有馬に住む人たちとの交流が深まりました。皆、有馬温泉が身近になったと思います。

弓削 地域の人たちも当初はこのイベントにあまり関心がないようでしたが、途中から協力してくださる人たちが増えてきました。

増田 我々観光に携わっている者にとっても、これまで気づかなかった有馬の新しい楽しみ方を気づかせてくれたのが有馬ゆけむり大学の取り組みだと思っています。

弓削 そこで次の試みとして思いついたのが卒業旅行です。有馬は1―3月が閑散期です。この時期の集客となると学生の卒業旅行ですので、ゆけむり大学に関わった学生の視点でパンフレットを造ってもらおうということになり、マーケティングと製品開発を学ぶ廣田ゼミの学生にお願いしたわけです。

―依頼があって、どう思いましたか。

市田 当初、学生の意見を聞き、卒業旅行商品づくりの参考にするとしか思っていなかったので、すべて自分たちで造るということに驚きました。

松井 とは言っても学生がどこへ何回卒業旅行に行くかわかりません。それではパンフレットは造れないので、4回生と1年前に卒業した先輩を中心にメールでアンケートを行い、卒業旅行の実施回数が2―3回、実施時期は2、3月が約7割を占め、国内旅行が65%だとわかりました。

市田 そこで皆で話し合った結果、お金や時間的な余裕がない学生に気軽に来てもらえるようなパンフレットにしようということになりました。旅行会社のパンフレットは「卒業旅行」「格安」といった文字が目立つ派手なものが多いのですが、私たちは女子学生が好むファッション情報誌「サヴィ」を目指しました。

志摩 見た目がお洒落で、中を見ると旅行のパンフレットだったというもので、有馬に来たらこんなことができる、あんなことができるといった情報を盛り込みました。

松井 旅館の内容ばかり載っていても旅行客にとっては、そこで何ができるのか見えてきませんし、イメージが湧かないところへ行こうという気になりません。そこで温泉街で食事や散策、買物を楽しめるマップを掲載しました。載せているのは私たちが気に入ったところばかりで、なぜ気に入ったのか、コメントも書き込みました。宿泊料金は1―3万円とし、旅館の人たちに少し無理なお願いもしました。

市田 パンフレットのタイトルを「のれんの先にちょっと大人の有馬旅」にし、中面に「人こそ一番の観光名所と知るべし」「有馬の近さを活用すべし」など、初心者でも有馬と仲良くなれる七カ条を掲載しています。

―苦労した点は。

志摩 すべて私たちでやりましたが、原稿を書くのが一番大変でした。

―集客はどうですか。

志摩 ツイッターを使ったり、関東・関西・中部・中国の13大学300人が参加する大学対抗製品コンテストのメーリングリストなどでPRしています。

弓削 ゆけむり大学は今年から「国際有馬ゆけむり大学」として海外の学生も巻き込み、世界を意識した取り組みも始めます。

増田 今、観光協会青年部のなかで海外に長期留学したメンバーが4人います。彼らは世界の中の有馬を意識して物事を考えてくれるので、有馬にとっての強みになっています。ゆけむり大学、卒業旅行が若い人たちに有馬温泉を売リ込むきっかけになったように、いろんな客層への機会づくりをしていきたいと思っています。

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