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中国人客誘致は官民一体で 呉煜康さん(ジャパンホリデートラベル社長)(2)

―そのほか、行政、民間と組んだ成功例があれば、教えてください。

昨年の秋に長野県の諏訪市が中国、茅野市が台湾でセールスプロモーションを行いました。市長や観光協会長、旅館組合の理事長が一緒になって、地元の魅力を訴え、宿泊してもらうよう働きかけ、今年の2月、旧正月の平日に1300人を送客しました。これは旅館と地域が共に取り組んだ本気度が相手に伝わったのだと思います。インバウンドは地方空港、オフ期、平日をどのように活用するかが大事で、そのマーケットで勝負していく必要があります。

地域の"本気度"は伝わる

―旅館から中国人対象のインバウンドは、宿泊料金が合わないという声をよく耳にしますが。

料金が合わないというのは旅館の言い分で、現在の料金体系でお客様が来るのであれば、それでいいと思います。でも今の旅館の料金とお客様のニーズは合っていないのではないでしょうか。なぜ、7800円や8800円の宿泊施設が流行り、旅館には行かないのか、その「なぜ」を考えるべきです。

私たちも1万5000円のものを1万円で提供してほしい、と言っているわけではありません。私たちから見れば旅館は無駄な部分が多すぎるのです。それを除外して「この金額でできないですか」と提示しているわけです。料理の部分であればバイキングにして、料金を下げるといった具合です。

かといって、料金が安ければいいということではなく、安めの料金設定にして、中国人が食べたくなるようなオプション料理をアピールするなど、儲ける仕組みを作ればいいと思います。

北海道の場合、食事が終わったあとすることがないため、有料でカラオケやダンスの会場を設け、お金が落ちるようにしています。テレビを見るといっても日本語がわかりませんから時間を持て余すわけで、楽しめる環境さえ作れば商売になるのです。

他地域の多くの旅館はそういった営業努力をしないで、「中国のインバウンドは安いから受けることができない」と言っているのは、おかしいのではないでしょうか。

安くて商売にならないのなら、北海道や諏訪湖で中国人インバウンドを受けるはずがありません。商売になる仕組みを作っているから成り立っているのです。

―実際、中国人インバウンドでの宿泊料金はいくらぐらいなのでしょうか。

5000円から1万円で、主流は6000円から8000円です。これも考え方次第で、10万円のお客様を1人取るということではなく、1万円のお客様を10人取って、そのあといくら使ってもらえるかを工夫するということです。

いくら旅館が1万5000円や1万8000円、2万円でないと受けない、といってもニーズがなければ誰も泊まりません。「お客様が求めているもの」について旅館は理解できていないように思います。

―最後に中国人インバウンドに関して、何かアドバイスがあれば。

私たちは昨年1年間で3700本のツアーを造り、7万人を送客しました。毎年25%ずつ伸ばしているので、来年は10万人を送ることができると自負しています。

手前味噌になりますが、中国人インバウンドを送客する日本一の旅行会社だと思っていますし、プロモーションのプロとして、オファーがあればいつでも協力します。

インバウンドで重要なのは宿泊情報も含め、官民一体となって地域の観光素材をどのようにアピールできるかです。その点、行政と旅館は意識改革の必要があります。

行政のバックアップがあって、旅館の努力、そして私たちの助言。この3つがあって初めて中国人インバウンドのスタートラインに立てると思っています。

家電を求める観光客の時代は終わりつつあり、地域の付加価値ある素材が観光コースに求められる時代に入っています。これからが勝負時です。

【ジャパンホリデートラベルジャパン】

2001年11月に常治屋日本旅行として設立し、02年にジョージハウスジャパンよりインバウンド業務を継承。同年から中国国民訪日観光団の受入業務を始め、中国訪日団体観光旅行日本側指定旅行社の1社に認定された。08年に現社名に変更し、10年1月に大阪府知事登録旅行業第3種から第2種に変更した。

現在、大阪本社のほか札幌支店、中国では北京、上海、広州、成都、武漢など主要都市に支店を有する。社員は約100人。

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