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旅行業・新しいビジネスモデルの確立 JATA経営フォーラム08から(2)

最近のJATA経営フォーラムは改革に焦点を当てたものが多かったが、今年のテーマは一歩進んで構築。構築の土台となる組織の改革はもう十分なのだろうか。

基調講演 セコム・木村昌平会長が語る 「捨てる勇気」で革新

基調講演はセコム会長の木村昌平さんが「哲学と捨てる勇気とビジネスモデル革新」をテーマに話した。創業以来45期連続で増収を記録し、グループの総売上1兆円の会社のリーダーから聞きたい話はたくさんあろうというものだ。

木村さんの話は、多くが「セコムの哲学」という企業理念について費やされたが、その前に発想の転換で生まれ売れた2つの商品について紹介した。

1つは、セコムが販売している癌保険についてだった。

木村さんは問いかけた。「皆さん、癌で死んで保険金がもらえて嬉しいですか」。セコムでは癌の治療にいくらでも保険金を支払う保険を売り出し、加入者を獲得しているそうだ。

もう1つ、話としては後半に出てきたものだが、絶対に盗まれない金庫を考えつき、それがたくさん売れている。

事業所に置いてある金庫は簡単に開けられてしまうし、最近は金庫ごと盗まれてしまう手口に変化しているそうだ。では、絶対に盗まれない金庫とは...。

それは金庫より広い土台と一体型の金庫。例えばシルクハットの部分を金庫全体だとして。ツバを足で踏みながら、シルクハットを持ち上げることはできない。例えは自作なのでうまく伝わっただろうか。

「セコムには哲学がある」と木村さんは話した。「社会の利に反しないか、より良き社会のためになるか。社会にとって正しいか、公正か」。判断基準は常にそこにあるという。

「会社のためにとは、絶対に考えてはいけない。間違える」と木村さん。

企業と社会に価値をもたらすことで利潤を生む組織だと、木村さんは繰り返す。セコム創業者の飯田亮さんは、セコムが社会から、「警備の会社だよね」ではなく「いい仕事をしている会社だよね」と評価されることを望んだ。

企業理念には厳格だが、発想は柔軟でなければいけない。「世の中にこれしかないはあり得ない。常識は疑ってかかれ」。

木村さんはそれを「創造的破壊、捨てる勇気」と表現した。セコムはかつて基幹事業だった巡回警備から撤退している。それが最初のビジネスモデルの変更だったという。

巡回警備は倍々で成長し、収益の中核事業となっていた。それを創業者が辞めようかと言い出した。

役員は全員一致で撤退反対の結論を出した。「そうか、撤退しよう。全員一致で勇気百倍だ。誰も考えない、最も困難でまっとうな道だと確信できた」。それが創業者の答えだった。

セコムは巡回警備から撤退し、そのお陰でオンライン警備の分野で躍進した。将来の負の遺産を捨てる選択、決別する勇気が今のセコムにつながっている。

巡回警備からの撤退は、機械にできることを社員にさせられないという思いから生まれたものだ。なぜ、24時間汗をかいている警備員の社会的評価が低いのかという思いからだ。

サービス業は、社員の人間的な価値を相当大事にしなければいけない。サービスの向上は顧客満足の追求と社員満足の追求でしか実現できない。木村さんは、商品の質は社員の情熱で決するとも言った。

(トラベルニュースat 08年3月10日号)

旅行業・新しいビジネスモデルの確立 JATA経営フォーラム08から(3)に続く

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