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「地域活性化バスに」温泉ライナー快走 ハーヴェストHD(2)

ハーヴェストHDはもともと、東京―大阪など大都市間を夜行便で結ぶツアーバス「ハーヴェストライナー」を運行してきた。ビジネスや観光利用で堅調な実績を挙げていたものの、大都市間のツアーバスは新規参入が相次いでいる。右肩上がりで伸びてきた市場は、ここ数年伸びが鈍化しほぼ飽和状態。過当競争の様相を帯びてきた。

5大都市圏から22路線 インバウンド向けも計画

ツアーバスとして新しい重要をつくらなければならない。同HDでは、夜行便のハーヴェストライナーが空く、昼間のツアーバスに活路を見出そうと考えた。グループ会社のバス稼働率を上げると同時に、需要創造の取り組みでもあった。

そうして3年前の春、草津温泉のホテルから新宿発着の直通バス運行の依頼を受け「温泉ライナー」の第1号を発車。「赤字にならなければ良し」という、平日で片道2千円を切る思い切った低価格と温泉旅館に横付けする利便性を前面に運行を始めた。

同HDの橋本卓也専務は「不安の中でのスタートでしたが、2カ月後には毎日35人以上が往復で乗車するまでになりました」。今や草津へは、新宿のほか東京駅、千葉駅の1日3便を毎日走らせている。

09年4月から運行を始めた長野県・蓼科温泉へのバスも、地元からの依頼だった。首都圏への路線バスが廃止され、町長や議会も動いたツアーバス運行の要請だった。

ところが4、5月は毎日ガラガラ。「本当に集まらなくて焦りました。町長や地元の人たちの顔を思い浮かべて、ここで撤退するわけにはいかないと何とか踏ん張ったんです」(橋本専務)。

ツアーバスの成否は、いかに告知するかに尽きるという。蓼科の場合、最初は一部旅館がホームページなどで知らせていた程度だった。夏休み前に地元が動き、複数の旅館ホテル、観光協会などが旅行会社、消費者にツアーバスをPRすると一気に好転。「ツアーバスで行く温泉の旅」としてテレビ番組で放映されたチャンスにも恵まれた。

「知ってもらえさえすれば、という自信はあります。かと言って、大規模な宣伝をする体力はない。地元の人たちにいかに協力してもらうかにかかっています」(同)。

また、集客では旅行会社の存在が欠かせない。各社にユニット商品として卸し販売手数料も設定。都市間バスはウェブの直販中心だったが、温泉ライナーは旅行会社の比率が半分以上になる。60代が乗客の大半を占め、ウェブで見ても電話、旅行会社で予約するそうだ。

4月1日から、4大都市圏発着で22路線の温泉ライナーが走る。低価格と利便性が支持を集め今後は、首都圏発着で訪日外国人観光客向けの温泉ライナーなども計画している。

橋本専務は「公共交通機関が乏しい地方へ、新しい人の動きを生むのが目標です。温泉地に限らず路線網を拡大し、地域活性化の一翼をツアーバスで担えないかと考えているんです」。

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