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歩いて、泊まってこそ面白い上高地

いつ来ても、まだまだ楽しめると感じさせる奥深さ

20年来、上高地に通っている。ほとんどが開山祭の時期で、こうなるともう定点観測といってもいい。20年通って確信は深まっている。上高地は歩いてこそ、泊まってこそ面白いと。

上高地に行くと毎年歩く。河童橋から明神池だったり、河童橋から大正池だったり、その逆だったり、左岸や右岸、梓川沿いや森の中の道を歩く。ときどき止まって森の音を聴く。他にハイカーがいないのを確かめてから木に抱きついたりしてみる。子どもと一緒なら、絶対に真似たくなる。

初めての上高地はやはり開山祭のときだった。まだマイカーは全日規制ではなく、開山祭の時期には上高地まで車で入ることができた。旧釡トンネルを抜け、早朝の大正池で車を停めた。まだフィルムのカメラで大正池と焼岳の写真を何枚も撮ったのを思い出す。初めての上高地は、それまで見たことのない景色だったから。

大正池と焼岳

上高地を代表する風景の1つ、
大正池と焼岳。清らかな水と
独特な山の景観が心に残る

今は通年のマイカー規制で、東京からだと沢渡エリアに車を止めてバスで上高地に入る。乗合バスでは、以前の釜トンネルを懐かしがる声をよく聞く。「前はトンネルが片側通行だったから信号待ちが10分もあって。今はあっというまに大正池だから便利だけど、あれはあれで味わい深かったな」といった具合に。

最近は大正池でバスを降りる人に、往復のバスチケットを持っている人は帰りのチケットを見せれば再び大正池から終点の上高地バスターミナルまでバスに乗車できることを運転手が案内してくれる。大正池で景色を眺め、写真を撮り、再びバスを利用したい人には便利だ。

大正池のマガモを少し眺めてから歩き始めることにする。池の縁の木道を歩く。下を覗き込むとイワナが泳いでいる。昨年はすれ違う人の多くがアジアからの旅行者だったけど、今年はほとんど見かけない。

田代池に寄り道してから、再び森林に入ると木道は二手に分かれる。梓川沿いを歩き田代橋に出る。右岸に旅館が2軒見える。いずれも上高地では珍しい温泉旅館で、その少し先にウェストン碑がある。

ウェストン碑

ウェストン碑は上高地を愛した
登山家の功績をたたえる

このうちの1軒、上高地温泉ホテルでコーヒーをご馳走になり、少し先の西糸屋山荘とホテル白樺荘でもコーヒーをご馳走になった。いずれも館内にカフェがある。

河童橋で再び左岸に渡り、それから小さな橋で清水川を渡る。ここにはいつも冷たそうなきれいな水が流れている。小梨平の脇を通って明神池を目指す。午後4時を過ぎると、すれ違う人は少ない。

少し行くと、左手に明神岳が迫ってくる。もう河童橋周辺とは眺めも雰囲気もまったく違っている。左に明神岳を眺めながら、観光地とは違う静かなトレイルを進むと明神館が見えてくる。河童橋からここまでは40分くらい。ここを左に折れると、吊り橋を渡って明神池まではもう少し。大正池からここまでは、ほとんどが平坦な道が続く。

明神館では冷酒をご馳走になった。昨年は水も持たず喉が渇いていて生ビール、一昨年は寒くて熱燗。それで今年は冷や酒にした。

このあたりは、釡トンネルが開く以前、上高地の玄関口だった。人々は島々から徳本(とくごう)峠を越えて、このあたりに降り立った。明神岳を望み、穂高神社奥宮、明神池を抱える明神地区は最近、パワースポットとしても注目されているそうだ。上高地は「神降地」とのことだ。

ここから、さらに先、徳沢までは1時間ほど。上高地に20年以上通っていて、ここから先にはまだ行ったことがない。まだまだ楽しめる上高地と思うことにする。

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