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恐竜時代から近代まで 福井・勝山で時空旅行

10/08/03

荒野に迫る足音、響きわたる鳴き声、巨大な体躯がなす威圧感―。恐竜が闊歩していた太古の時代に、もしタイムスリップしたらどうしよう・・・なんて想像、誰もが一度はしたことがあるのではないだろうか。そんな世界観が体感できるのが福井県勝山市の県立恐竜博物館。国内最大級の恐竜のミュージアムは恐竜時代の神秘に満ち溢れている。ちょっとタイムスリップしに行ってきた。

太古の時代にタイムスリップ 県立恐竜博物館でティラノサウルスに驚嘆

勝山市は、約1億2千万年前の恐竜・フクイラプトルなど多くの恐竜化石が発掘されている"恐竜の里"。同館はその象徴として2000年にオープンし、40体の恐竜骨格など1千を超える標本、大型復元ジオラマ、映像などでダイナミックな世界を伝えている。子どもから大人まで年間40万人が訪れる人気施設だ。

今年度は開館10周年ということで、7月9日に常設展示の内容をリニューアル。運良く新しい展示を見ることができた。

銀色に光るドーム型の展示室「恐竜ホール」は、4500平方メートルもの広大な無柱空間。入口のある3階から展示見学のスタートである地下1階へ降りていくと暗さが増し、まるで地底へ潜っていくような錯覚を受ける。

まず、巨大なカマラサウルスの骨格化石が横たわる。今回のリニューアルでアメリカからやってきたもので、地中に埋まる骨格はまるで眠っているようだ。

県立恐竜博物館カマラサウルス

地中で何を思う、カマラサウルス

そこから1階へ向かうと、雄叫びを上げながらこちらを睨みつけるティラノサウルスが目に飛び込む。もちろんロボットなのだが、10メートルを超える巨体が見せる激しい動きと鳴き声の威嚇に圧倒。本物は当然会ったことはないけれど、本物なんじゃないかと思わせるリアルさで、つい「はじめまして」と言ってしまった。展示室中央に放つ存在感は半端じゃなかった。

県立恐竜博物館ティラノサウルス

ティラノサウルスの存在感に圧倒

今回のリニューアルでやってきたオロロティタンなど様々な全身骨格を眺めて歩く。さすがに巨大な骨格がズラッと並ぶ様子は、骨格ではあるけれど、恐竜は本当に存在したんだと再認識させるに十分なリアルさを放ち、ある種の神秘を感じずにはいられない。

また、恐竜骨格の観察や化石に触れることができる「ダイナラボ」、化石クリーニングの現場見学など恐竜研究の一端にも触れられるコーナーも。

眺めて触れて考えて感じる恐竜の世界。この時代にもし飛ばされたら―と、やっぱり考えてしまった。

近代の勝山は活気に満ち溢れていた ゆめおーれ勝山

恐竜時代から近代へひとっ飛び。水のきれいなまちである勝山は昔から繊維業が盛んで、明治から昭和にかけて繊維工場が軒を連ね、多くの工員が働いた繊維のまちだ。今は工場も少なくなったが、伝統は脈々と受け継がれている。

「ゆめおーれ勝山」は勝山の繊維業の歴史を伝える記念館。織機や糸繰機など実際に使われていた機器、資料を展示しているほか、手織り体験もできる。国の近代化遺産である機業場だった建物を活用し、外観、内部ともに趣きたっぷりだ。

同館では、昭和中期に集団就職でやってきた女性工員「織子さん」もガイドとして所属。約50年にわたり織子さんを務めた齊藤ケサミさんは、パネル写真を眺めながら、実際の作業からまちの雰囲気まで、繁栄した時代の話を聞かせてくれた。

「多くの女性が各地からきて賑わいました。家庭では男は芸妓と飲み歩き、女は家で機織り、なんて言われた時代でしたね」。宮崎県からやってきて送った寮生活や仕事内容など語る内容に当時の勝山の様子が目に浮かぶ。

ゆめおーれ勝山

機器を前に当時の様子を語る齊藤さん

現在の勝山は「工場も少なくなってしまったけど、まだまだ元気な企業も残っていますよ」と話す齊藤さん。最後に「集団就職で来られた女性は皆さん勝山に残られているんですか」と問うと、「いえ、大半が地元に帰りました。私は、悪い男にひっかかってしまって」。時代の最前線を生きた人ならではの実感がこもり、当時の活気と勝山の人々の人柄が伝わってきた。

"ほんもの"に触れることは、旅に与える重みが違う。それは、太古から近代というまったく異質の時代の空気をもリアルに感じ取らせてくれた。もしこの時代に生きていたら―。そう感じてしまう旅は充実した旅に違いない。

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