創立80周年と未来 瀧多賀男さん(下呂温泉旅館組合理事長)(1)
岐阜県下呂市の下呂温泉旅館協同組合が今年創立80周年を迎えた。日本三名泉の一つとして発展してきたが、80年の間には飛騨川の洪水や飛騨川バス転落事故など幾多の困難にも直面した。その都度、知恵と工夫、強じんな精神で克服してきたと先人たちを称え、自らも下呂温泉の文化や歴史の掘り起こしに尽力している瀧多賀男理事長に話を聞いた。
観光立国へ具体的な行動を
―80周年を節目に新たなスタートを切りました。現在の心境を教えてください。
我々には、温泉資源や文化を後世に伝える重大な責務があります。その中で、国が観光立国を掲げました。それ以降、地域の歴史や文化が見直されてはきたものの、観光という言葉だけが先行し過ぎるように思います。
いろんなところで行政の首長や同等クラスの人の話を聞いていて共通するのは「観光振興には地産地消、長期滞在、着地型観光が求められている」とは言いますが、具体的にこうする、ああするとは言わない。国の報告書などに書いてあることを羅列して話すだけなので、これでは何も変わりません。
観光が本当に地域にとって必要だと思うのなら、具体的な行動を起こさないと意味がありませんし、具体策を示さなくてはなりません。言葉だけで何もしないのなら、言葉遊びをしているだけです。
―具体的な行動という意味では、下呂温泉ではこれまで観光協会の会員と一緒に有名観光地へJRを使って行く車上セミナー、東京や名古屋、大阪での観光誘致会議の開催、最近では温泉感謝祭や飛騨牛謝肉祭を開いてこられましたね。
自分がしてきたことを顕彰するのは心苦しいのですが、あえて言わせていただくと車上セミナーは観光従事者だけで観光地を見て回るよりは、直接観光に関わらない観光協会会員と一緒に有名観光地へ行った方が、共通認識になり観光の理解が深まります。
JRを使うのは、大阪からの直行列車の本数を増やしていただく働きかけでもあるわけです。誘致会議も下呂温泉という名を東京、名古屋、大阪の観光関係者や旅行会社へ広める大きな要因となりました。
→創立80周年と未来 瀧多賀男さん(下呂温泉旅館組合理事長)(2)に続く
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