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舟運にバリアなく、東京観光の〝売り〟の可能性高 「江東水運MaaS事業」ユニバーサルツーリズムセミナー

江東区水運MaaS事業事務局は1月11日、「『江東水運MaaS事業』ユニバーサルツーリズム(UT)セミナー」を江東区文化センターで開いた。講師はユニバーサルツーリズムの専門家であるオフィス・フチの渕山知弘代表で、江東区内の観光事業者や、宿泊施設、旅行会社、メディア、台東区や港区、墨田区など周辺自治体・観光協会など計26人が参加。障がい者だけではなく、高齢者市場もターゲットに見据えた江東区の観光資源の有効な使い方を解説した。

ユニバーサルツーリズムセミナーの様子

江東水運MaaS事業は、2022年度に観光庁が行う「看板商品創出事業」の一環。江東区内に広がる舟運の観光での利用を見据えた、「誰にでもバリアフリー」な観光の実証実験などを行っている。

渕山代表「舟運にバリアなし」

今回のセミナーでは、渕山代表が①観光庁が推進するユニバーサルツーリズムとは②他県の海・川、船を使ったユニバーサルツーリズム事例③専門家が見た江東水上バスのユニバーサルツーリズム市場の可能性―の三つをテーマに、動画や画像を交えながら話した。

渕山代表は実際に11月に江東区水運MaaS事業で運行する江東水運フリーパスに乗船した経験をもとに、「旅行会社に在籍していたらすぐにでも商品化したいすごく魅力を感じる観光素材である」と伝えた。

江東区におけるユニバーサルツーリズムの可能性については、①各乗船場に致命的なバリアなし②船の乗降、船内にも致命的なバリアなし③移動がバリアの車いすだが、乗っていいるだけで景色・風を楽しめる―ことを上げ、「魅力と可能性しかない」と強調した。

江東区内の運河に設置されている乗船場

また、バリアフリー江戸めぐり団体向け商品として販売するためのポイントとして、①関係者を対象にした研修(座学・体験)②リフト付きバス、リフト付きバンの乗降と駐車場の確認③乗降場付近のエリアやトイレの確認④天候による延期の際のバリアフリー対応⑤ホームページで画像・動画による紹介・商品販売―を挙げた。「①と⑤についてはメディアの取材を入れると効果的」と渕山代表は述べた。

乗船場および周辺のバリア・バリアフリー

約6割が今後前向きにユニバーサルツーリズムへの取り組みを検討

セミナー後のアンケートには15人が回答。ユニバーサルツーリズムを知っていたという人は40%だった。今後取り組めそうなことが浮かんだと答えた人は60%いた。

感想では「バリアフリーについて考えるハードルが低くなりました」「車いす利用者が観光しやすいルートマップの作成などは当区で取り組んでいるが、だれでも楽しめる観光、ツーリズムという視点での取組について参考になった」「障害者や高齢者が参加しやすい旅行は、結果的に誰でもが参加しやすい旅行になる」「身体障がい者の方や高齢者の方だけでなく、『誰もが』という考え方がユニバーサルツーリズムの考え方の大前提にあることが一番勉強になる」などの声が上がった。

一方、ユニバーサルツーリズムへの普及への課題について、情報不足と答えた人が60%、設備予算と答えた人が53%いた。普及に向けては「参加者の費用感の意識低減、協力事業者との連携」「観光施策は補助に頼ることなく継続できることが大切と考えます。このため、黒字になれるだけのツアー客を確保するためのコンテンツ作りや広報のあり方が課題」「旅行先の現地の方々は介助に不慣れな方も多いと思うので、即座に取り組むのは難しい」「船着場の整備、使用料の減額や免除、船着場スタッフのサポートなど行政の積極的な協力が必要」などの意見が上がった。

今後導入したい福祉用具や機材については、「自前で用意するのではなく、舟運事業者が導入出来そうな補助金」「船着場で船に乗り降りする際の簡易スロープ」「機材よりマンパワー」などを求める声が多かった。

船にバリアはなく、東京観光の「売り」の1つになる可能性高い

同セミナーを通じて、渕山代表は「乗船場がバリアフリーかどうかは重要だが、駅から近いか?周辺にバリアフリートイレはあるか?乗船前後に周辺に楽しめるスポットはあるか?等々、観光として考える際には複合的に検討する必要がある」と課題を語る。

今後に向けては、「結論から言えば、いくつかのハードルはあるにしてもユニバーサルツーリズムとして致命的なバリアはなく、今までにない東京観光の『売り』の1つになる可能性は高く、新たな交通手段として舟運観光を推進してほしい」と期待を述べる。

 

江東区観光イラストマップ

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