バンクシー展に行ってきた この週末も横浜で開催中
横浜市で開かれている、「バンクシー展(天才か反逆者か) Banksy Genius or Vandal?」。世界中から注目される匿名アーティスト、バンクシーの日本初の個展に行ってきた。
彼は作品で、普段私たちが見過ごしがちな、もしくはあえて目を向けない社会現象、社会問題に鋭く切り込む。それを風刺やダークユーモア、アイロニーを伴って。ポップな絵柄から、クスっと笑ってしまう作品も多い。そして時にハートフルで心に残る。
最も有名な作品の一つ「ラブ・イン・ジ・エア」は、パレスチナとイスラエルの紛争が続く地区の壁に何度も描かれたもので、覆面の男が火炎瓶の代わりに花束を投げようとしている。彼の平和へのメッセージを表す代表的な作品だ。
イギリス議会の様子を精密に描いているが、よく見ると政治家たちはみんな猿の、「モンキー・パーラメント」や、鮮やかな青空にピンクのリボンがかかった軍用ヘリが飛んでいる、「ハッピー・チョッパー」など、私には引き込まれてしまう作品ばかりだ。
ステンシル(型版)で描かれたドブネズミ・シリーズも有名。ネズミの持つプラカードには「地獄へようこそ」や、「できるうちに逃げろ」などと書かれ、時代や場所、状況や人によって様々な受けとり方ができる。コロナウィルスの感染拡大と関連させて見てしまった。
東京の日の出桟橋で見つかったのはこのシリーズの一つ。その時のラットは傘と旅行鞄を持っていたけれど。
彼はステンシル・アートを中心に作品を創るが、これは壁に落書きをするスタイルのため、素早く作品を仕上げる必要があったためとか。
最も眺めの悪いホテルの部屋を再現
バンクシーはパレスチナ地区を分ける壁のすぐそばに、10部屋ほどのホテルを開業している。
ホテル名は「WALLED OFF HOTEL(壁で隔てられたホテル)」で、彼自身は「最も眺めの悪いホテル」と呼んでいる。ディズニーランドをもじった「DISMALAND(陰鬱園)」を期間限定でオープンしたり、映画を作ったりと、グラフィティー・アート以外の活動の幅も広い。
展示の最後は、代表作の一つ、「赤い風船と少女」。7割のイギリス人がこの絵がバンクシーのものだと認識でき、おそらく最も愛されている現代アートの一つであろう。赤い風船は希望を表わしているとされる。
実際の壁に描かれた15のオリジナル作品は、今は一つも残ってないが、展示会では再現されたスクリーンプリントで見ることができる。2018年、ザザビーズのオークションで、100万ポンドでの落札が決まった途端、シュレッダーにかかったのも「赤い風船と少女」だった。
展覧会に、匿名アーティストのバンクシー自身は参画していない。作品は、個人コレクターやバンクシーの知人、一緒に仕事をした人、作品を切り取った人たちから集めたものだ。
「アイ・アム・バンクシー」のロゴが入ったTシャツを着たプロデユーサーのアレクサンダー・ナチケビアさんは、オープニングのあいさつで、「この展覧会には私たちの彼への愛と敬意が詰まっている」と熱く語った。見終わったとき、私もすっかりバンクシーファンになっていた。
文と主な写真 中野愛
コロナ対策で時間別のチケット枚数を管理
バンクシー展は9月27日まで、横浜駅直通の「アソビル」で開催中。
新型コロナ対策として、インターネット販売を中心に日時指定で販売チケット枚数を管理し、余裕を持った観覧空間を確保する。そのため前売り券が売り切れの場合、当日券は販売しない。販売状況はウェブサイトから確認できる。
日時指定の前売りチケットは、平日大人1800円、学生1600円、中学生以下1200円、土日祝日は各200円増しなど。
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