東京の観光復活の施策を議論 有識者会議、コロナ偏見に対策を
東京都は9月9日、都庁で「東京の観光振興を考える有識者会議」を開き、ウイズコロナ時代の東京の観光復活のための施策について意見を交わした。会議の様子はユーチューブで生配信した。
約1時間の会議という限られた時間のなか、星野佳路・星野リゾート代表が5分間のプレゼンテーションを行い、そのほかデービッド・アトキンソン小西美術工藝社社長、東洋文化研究者のアレックス・カー氏、田川博己・東京商工会議所副会頭(JTB取締役相談役)らが、2分程度の持ち時間で意見を述べた。
星野さんは、民間企業に対する行政の支援を、直接助成型から需要創出型へ転換するよう求めた。
「雇用調整助成金の特例により、ホテルの損益分岐点が低くなっている。Go toである程度需要は戻っていて、観光事業者は黒字化の可能性もあります。訪日客がないなか、まず日本人を観光に戻すのが大事です。そのためのスポーツ、コンサート、イベント、展示会など、需要を創出する施策を打ち出してほしい」
また、宿泊施設や飲食店の感染拡大防止対策についての評価を、行政が行うのではなく利用者に委ねるべきだと主張した。
「トリップアドバイザーのように利用者が店の感染防止対策を評価する形にすべきだ。施設にとっても、役所のチェックより、利用者からのコメントが参考になる。星野でもそれらを参考に日々、対策を進化させている」
東京都では宿泊施設や飲食店、劇場、娯楽施設など幅広い店舗を対象に、自己申告による「虹のステッカー」(感染防止徹底宣言ステッカー)を配布している。
星野さんはさらにインバウンド旅行について、再開時の受け入れ態勢について注意を促した。
「独自アンケートで、都民の31%が旅行することを迷っています。来ないでくれと言われ続けているからです。ある宿泊施設は、『東京都民の入館お断り』というボードを玄関前に立てています。同じことがインバウンドでも起きることを危惧します。『外国人お断り』の看板が出れば、世界のメディアがそれを発信します。偏見を持たない受け入れ態勢につながる施策が必要です」
偏見の問題については他の委員からも同調する意見が聞かれた。
アトキンソンさんは、流行にもなっている「量から質への転換」に疑問を投げかけた。
「量から質への転換というフレーズは誤解招くもので、量と質のバランスが重要と言い換えるべきです。東京のような巨大な市場では、富裕層の経済効果は全体から見れば微々たるものになります。巨大市場は量がなければ成り立ちません」
ただ、国が富裕層戦略の議論を始めるには「タイミングがいい」と指摘する。
「私は基礎的なインフラができていないなかでの富裕層戦略に否定的でした。この5年でインフラはある程度整ったので、いいタイミングだと思います。観光地はレベルアップしていますが、認知していないのが日本人です。日本政府観光局も含め、国内への情報発信を検討するべきです。コロナの時代でも、人は魅力に魅せられて観光に行くんです。インフラを磨き上げることが基本です」
有識者会議は、知事と有識者の意見交換の場として定期的に開かれているが、コロナウイルス感染症の影響で2020年は初の会合となった。会議には小池百合子知事も出席した。
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