東京・島しょで海外富裕層向けツアー 東京観光財団が可能性を探る
東京観光財団は3月2日、伊豆七島など東京島しょ地域への海外富裕層の誘客をテーマにしたオンラインセミナーを実施した。海外富裕層トラベラーの現状やトレンドに加え、昨年秋に伊豆大島と八丈島で実施した富裕層向けのモデルツアーを紹介した。
一般的に100万ドル以上の個人金融資産があると富裕層で、さらに3000万ドルを超えると超富裕層に区分されているそうだ。
彼らの旅行はラグジュアリートラベルと呼ばれ、1回の旅行先で100万円以上を消費する。旅行先に経済的なインパクトを残すだけでなく、最近の富裕層のトレンドとしては旅行先に貢献したい、自然やコミュニティの存続につながる、いいインパクトを与えたいと望む傾向があるという。
こうした志向を踏まえブータンでは観光滞在税として1人1日当たり250ドルが徴収され、観光客を減らしながらも収益率を高める施策が取られていると説明されていた。
ブータン政府観光局のウェブサイトによると、1人1日あたりの「公定料金」が定められていて、それは季節や人数によって変動し1人1日あたり200ドルから290ドルと記載されていた。公定料金には税のほか宿泊費、食事代、ガイド費用などが含まれているそうだ。
また、アフリカのルワンダでは野生のマウンテンゴリラの見学に1人1時間1500ドルが必要で、収益の10%が隣接地域に配布されている富裕層向けプランの例が紹介されていた。地域にいいインパクトを残すという意味で、こうした地域の経済循環に寄与する観光モデルが求められているいう指摘だった。
伊豆大島と八丈島で実施した富裕層向けモデルツアーについては、ツアーを企画・開発・実施した楽天グループのスタンコフ・アレクサンダー・ディミトロフさんが説明した。
「開発しない開発」をコンセプトに、それぞれの島が持つ自然や文化を、世界のラグジュアリーツアーのトレンドに合わせる形でツアーを造成した。
基本に据えたのは本物、柔軟性、オーダーメイド、人とのつながりの4つ。大島では富士山と夕日を望む高台の別荘に宿泊し、夕食にはシェフを派遣した。サイクリングにはサポートカーが付くだけでなく、キッチンカーも手配、人影のない砂浜近くでランチを出すことで意外性を演出した。
八丈島では普段は入港困難な無人島、八丈小島に特別に上陸。別の訪問先で話題が八丈島のレモンで盛り上がると、そのまま予定外のレモン農家を訪れた。海の幸のプレゼンには地元の猟師を招き、夕日を背景に魚のさばき方を披露した。
アレクサンダーさんは「島の宝は人」と繰り返し、黄八丈の工房を訪れての職人との交流など材料はまだまだあるとして、島しょでの富裕層向けツアーに自信を示していた。
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