山梨県 今度はアニマルウェルフェア、新しいフードツーリズムに
山梨県は1人1泊あたり最大5000円を割り引く県民割り「やまなしグリーンゾーン宿泊割り」の対象に、4月1日から群馬、茨城、埼玉、千葉、長野の各県在住者を追加する。
3月21日にまん延防止等重点措置が全国で解除されたのを受け対象を拡大するもので、適用にはワクチン3回接種済みかコロナ陰性証明が必要となるが、県境をまたいだ春の旅行が賑わいそうだ。
山梨県は昨年11月、コロナ感染症の新規感染者数が東京でも10人程度と落ち着いていた間隙を突き、「おいしい未来へ やまなし」をテーマに、メディアを対象にしたサステナブル体験ツアーを実施した。
ツアーで紹介されたのは「アニマルウェルフェア」や「4パーミル・イニシアティブ」への取り組みを通じて提供する、山梨のおいしい食や酒、持続可能性のある新しい形のフードツーリズムだった。
アニマルウェルフェアは家畜などの動物をできるだけ苦痛を与えずに飼育することなど「動物の福祉」という概念を差し、家畜のストレスを減らすことで結果として生産性の向上や安全でおいしい食材の提供につなげるという考え方。
コロナ感染症拡大防止対策で全国モデルともなった先進的な「やまなしグリーン・ゾーン認証制度」を進める山梨県が、今度はアニマルウェルフェアへの取り組みでサステナブルなツーリズムの実現を目指している。
視察ツアーでは「平飼い放牧」の養鶏に力を入れる黒富士農場を訪れ、今後5年間で従来型のケージ飼育を全廃する構想などについて聞いた。この日は鳥インフルエンザへの警戒から放牧の様子は見られなかったが、見晴らしのいい広々とした斜面に立つ平飼いの鶏舎で鶏たちがうごめいているのが見えた。
黒富士農場では放牧卵や卵の加工品などをサービスエリアなどで販売しているほか、食の安全性などに関心の高い利用者が多い東京の生活協同組合などに出荷している。
もう1つの取り組み「4パーミル・イニシアティブ」は初めて聞く言葉だった。農業分野から脱炭素社会の実現を目指す試みで、農業の過程で生じる二酸化炭素を土壌に多く閉じ込めることで大気中の二酸化炭素を減らそうというもの。
4パーミルは0・4%の意味で、土壌の表層の炭素量を年間0・4%増加させれば大気中の二酸化炭素濃度を実質ゼロにできるという考え方に基づく国際的な取り組みだという。
ワイナリーのブドウ畑で、実際に農業の現場で4パーミル・イニシアティブへの取り組みがどのように行われているのかを見学した。従来は焼却処分していた剪定枝を炭化する状態まで燃やし、それらをブドウ畑に埋めることで土壌への炭素の閉じ込めを図っていた。土壌の炭素は栄養分にもなるという。
こうして栽培され収穫されたブドウから造ったワインと鹿のジビエが、富士山を望むブドウ畑の一角でツアー参加者にふるまわれた。ブドウ畑での野宴は感染症対策にもかなっているとかは別にしても、おいしくて気持ちのいい時間だった。
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