楽しく読めて ときどき役に立つ観光・旅行専門紙「トラベルニュースat」

岡山県備前市 𠮷村武司市長、北前船を契機とした欧州への販路拡大で「備前焼」を将来につなげる

23/12/05

岡山県備前市の𠮷村武司市長はこのほど、岡山県岡山市の杜の街グレースで開かれた「第4回地域連携研究所大会 in OKAYAMA」で、「備前焼の欧州での展覧会と販売拡大」をテーマに講演した。同市は、2022年7月29日に日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」の最も新しい49の機寄港地に認定された。日本の伝統工芸美術品であり六古窯に認定される「備前焼」の欧州への販路拡大のほか、官・産・金・学の連携による新たな協働の枠組みによる収益化できる自立した組織の構築などの取り組みから、備前焼を将来につなげる。

𠮷村市長

𠮷村市長

備前市にある3つの日本遺産の一つ「備前焼」

備前市は、①特別史跡旧閑谷学校②六古窯「備前焼」③北前船寄港地構成文化遺産-の3つの日本遺産がある文化の町として知られている。中でも、備前焼は「連綿とつながる歴史」があり、①「平安後期~鎌倉初期」碗・鉢・小皿②「鎌倉」〈備前 直線文壺〉③「鎌倉」鎌倉時代三耳つぼ④安土桃山 櫛目波状分壺-などの作品がある。

備前焼は、約800年の伝統がある焼き物。土づくりから土練りを経た上質な粘土を用い、高い成形技術から形作られた作品は、約20日間という長い焼成時間をかけて作り出されている。窯の内部の温度は約1200度まで上がるという。代表的な絵柄としては、「胡麻」「棧切」「緋襷」などがある。

備前焼の行程

備前焼の行程

北前船を再現し、インバウンドなど誘客へ

講演では、𠮷村市長が備前市による備前焼の販売拡大策として「備前市 北前船 PROJECT」を披露。備前市に北前船を模した観光船を建造する。寄港地ルートを再現した歴史ツアーや、当地でしか味わえない魅力ある観光ルートを開設し、大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭を契機としたインバウンドや日本全国からの誘客で地域を活性化する。

2024年はイタリア「ミラネサローネ」で備前焼を売り込む

備前焼のPR活動では、北前船交流拡大機構と連携を緊密にし、2022年10月18日にはフランス・パリのルーブル美術館で開かれた北前船寄港地フォーラムに参加するほか、パリ日本文化会館では備前焼セミナーを開いた。同セミナーには約90人の参加があり、備前焼作家が備前焼の歴史や土づくりの大切さなどを講演した。同市は、パリで開かれた北前船寄港地フォーラムを契機として、2023年1月17日にはフランス・ヴァロリス市、同年1月19日にはイタリア・ファエンツア市と「友好の書」を締結。国をまたいだ地域間連携で販売拡大を図る。

2023年7月13~16日には、フランス・パリで開かれた「JAPAN EXPO2023」に備前焼として出展。同市から備前焼協力店が約77店舗が参加し、116点が出品された。𠮷村市長は、「予想を超える大盛況となり、最終日には完売した。コップや皿と言った日用品に位置付けられた備前焼の品質の高さが伝えられた」と、備前焼の海外展開への手応えを語った。今後は、フランス・モナコで開かれる展示会「Made in Japan」への出展や、フランスのレストランでのサンプリング調査、フランスにおけるニーズ調査・分析を岡山県瀬戸内市と共同で行っていく。

このほか、今後は2024年4月16~21日にイタリア・ミラノで開かれる世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」に出展する計画を明らかにした。会場には世界173カ国からバイヤーなどが訪れる予定。会場では、秋田県大館市と連携しながら、備前市が備前焼、大館市が曲げわっぱを売り込む。欧州では、ミラノサローネのほか、フランス・パリ、同・ヴァロリス、同・ストラスブール、ベルギー・ブリュッセルで巡回展を開催する。

今後の海外展開について、𠮷村市長は「巡回展は、EUで実施後には米国・ニューヨークでの開催を検討している。備前焼の販路拡大に向けて、積極的に取り組んでいきたい」と展望を述べた。

備前焼を会社(組織)を作り展開

𠮷村市長は、備前市と瀬戸内市が実施する伝統工芸美術品「備前☆」の継承・活用による地域振興事業を紹介。事業は、伝統工芸美術品が市民の誇りになるほか、生産者の増加、国内外への認知度向上と販路拡大、製作技術を活用した新たな商品開発、官・産・金・学が連携した伝統工芸美術品を取り扱う会社の確立を目標としている。現在、備前市は備前焼を軸にファインセラミックなど未来を見つめた製品開発など産業振興を、瀬戸内市は備前刀を軸に日本刀の聖地として刀剣文化の振興を図っている。一方、課題では、後継者不足や収益悪化による伝統工芸技術の継承危機や、産業として信仰を図るための新たな協働の枠組みなどが挙げられている。今後は、自治体や産、金が出資・支援する会社(組織)が、プロモーションや販路拡大(販売)、商品開発を展開する。

「北前船や地域連携研究所のつながりが生み出したもの。今後もさらなる海外展開による需要開拓事業に取り組んでいきたい」と𠮷村市長。

取材協力 ツーリズムメディアサービス(https://tms-media.jp/posts/17660/

この記事をシェアする
購読申し込み
今読まれているニュース
地旅
今すぐにでも出たくなる旅 最新
未来へつなぐ四国「おもてなし」の魂・愛媛編

「四国はひとつ」の旗頭のもとに4県がひとつになって観光振興を進める四国。その根幹は、四国八...

未来へつなぐ四国「おもてなし」の魂・高知編

「四国はひとつ」の旗頭のもとに4県がひとつになって観光振興を進める四国。その根幹は、四国八...

未来へつなぐ四国「おもてなし」の魂・徳島編

「四国はひとつ」の旗頭のもとに4県がひとつになって観光振興を進める四国。その根幹は、四国八...

夕陽と語らいの宿ネットワーク
まちづくり観光研究所
地旅
関西から文化力
トラベルニュースは
文化庁が提唱する
「関西元気文化圏」の
パートナーメディアです。
九観どっとねっと
ページ
トップへ