かぶら寿司など能登の元気を支える「発酵文化」を発信、石川県中能登町
中能登スローツーリズム協議会(石川県中能登町)は10月2日、能登の元気を支える「中能登町」から発酵文化を伝えるイベントを東京・池袋の駅たびコンシェルジュ池袋で開いた。一般来場者13人が参加。「かぶら寿司」「どぶろく・甘酒」といった能登の発酵文化のほか、能登の地理・歴史、元日に発生した能登半島地震による被害状況などを伝えた。
発酵文化が根付く中能登町
石川県中能登町はその名のとおり能登半島のほぼ中央に位置し、農業、織物産業、歴史的文化が豊かな町。1月1日に発生した能登半島地震以降は、被害を受けた中で被災地の支援拠点としての役割も担っている。
イベントでは、能登の伝統的な食文化である「発酵文化」の中から、「どぶろく・甘酒」「かぶら寿司」の魅力を披露。また、どぶろくや甘酒の試飲体験が行われた。
イベントの冒頭、中能登スローツーリズム協議会の大湯章吉理事・事務局長が「震災後には9月21~23日には豪雨災害もあり、さらに厳しい状況となっている。そのような中、多くのボランティアなど支援には感謝している」と、能登半島地震や令和6年9月能登半島豪雨への支援に謝礼を述べた。
大湯事務局長は、能登の誕生として757年に能登國ができたこと、能登の語源として、アイヌ語で「のっ」が「あご」「みさき」の意味を持ち、仙人が役目を果たして天に登ったことなどが伝わっていることを披露した。中能登町については、能登で唯一海に面していない町であることや、日本最古の「おにぎりの炭化米」が発掘されるなど、繊維と農業の町として栄えてきたことを話した。
また、「能登の里山里海」が世界農業遺産に認定されていることを紹介。能登の里山里海は、日本列島のほぼ中央に位置する石川県の北部、日本海に突き出た能登半島の4市5町に広がり、2011年6月に新潟県佐渡市の「トキと共生する佐渡の里山」とともに国連食糧農業機関(FAO)から日本で初めて世界農業遺産に認定されている。認定では、生物多様性が守られた伝統的な農林漁法と土地利用や、山里海に育まれた多様な生物資源、優れた里山景観、伝えていくべき伝統的な技術、長い歴史の中で育まれた農耕にまつわる文化・祭礼などが評価されている。
マニュアルに頼らなくても対応できる能力が大事
能登半島地震など災害後の状況ついては、震災後は避難所で暮らす人が多いこと、豪雨災害では奥能登3市町が被災し、死者や安否不明者がでるほか、断水が5060戸にまで及んだことなどを説明した。震災で困ったこととしては、①親族の安否確認②余震の不安③飲料水や食料の不安④トイレ・洗濯等の生活水⑤ガソリンなどの車の燃料⑥灯油などの暖房の燃料⑦破損住宅に住み続ける不安⑧住宅の応急処置ができない不安⑨復旧の目途がたたない―を挙げた。大湯事務局長は災害への準備として、「災害に対応するには、マニュアルに頼らなくても、何が起きても対応できる能力を身に付けることが大事」と事前対応の大切さを強調した。
風邪を引きにくくする健康の源「発酵食」
能登の発酵文化については、縄文時代から長い冬を乗り越えるための保存・加工技術が磨かれてきたものであり、能登の夏は高温多湿で食品が腐ってしまうことへの対応として育まれてきたことであることが紹介された。
農事組合法人の能登やまびこの稲葉清弘理事は、発酵食のメリットとして①保存性が高まる②味わいや香りが高まる③栄養素や健康調節機能が高まる―ことを挙げ、GABAによる抗ストレス作用や乳酸菌による免疫力向上、ポリフェノールによる体の酸化防止といった効果があることを紹介した。稲葉理事は、「毎日発酵食ばかり食べているが、風邪を引かずに健康に過ごせている」と述べた。
能登の代表的な発酵食としては、①いしり(イカやイワシを使った魚醤)②こんかイワシ(イワシを米ぬかに漬け込む)③ベン漬け(イカのいしりに大根やナス、キュウリなどを漬け込み焼いて食べる)④かぶら寿司(カブやサバなどの魚を挟み漬け込む発酵食。縁起物として正月料理に使われる郷土料理)-がある。
このほか、かぶら寿司やどぶろくの製造工程の説明が行われた。どぶろくは、古代から神事として作られているが、全国の神社8万8千社のうち、どぶろく製造ができるのは30社であり、うち3社が中能登町にある。地域は現在、「どぶろく特区」の認定をうけている。
参加者からは、「震災を契機に能登を知ることとなったが、訪れて、食べて応援ができれば」「どぶろくが季節によって味に違いがあることは初めて知った。かぶら寿司もほんばで味わってみたい」といった声が上がった。
中能登スローツーリズム協議会では、スローな旅をテーマに、「ゆったり」しながら「じっくり」と「深い味わい」を楽しむツアーを企画。同協議会が運営するウェブサイト「ゆったり旅のと」(https://slowtourism-noto.jp/)では、体験プログラムとして農家から秘伝を教わる「かぶら寿司づくり体験」や草木をすき込んだ和紙アート体験を用意するほか、「能登上布」を使ったストールや中能登産「青木こしひかり」など特産品の通信販売、宿泊施設、観光名所の案内などを行っている。
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