東京の人が離島に住んでいると思うことから
日本旅行業協会(JATA)は9月30日、訪日旅行の早期回復をテーマにしたシンポジウムを開いた。9月29日-10月2日まで、東京・有明の東京ビッグサイトで開催された「JATA国際観光フォーラム・旅博2011」のプログラムとして行った。
モデレーターは石森秀三・北海道大学観光学高等研究センター長、パネリストは佐藤義正・国際観光旅館連盟=国観連=会長(岩手県つなぎ温泉・南部湯守の宿大観)、東良和・沖縄ツーリスト社長、李碩鎬・ビコ社長、山田尚義・観光庁審議官が務めた。
日韓専門の旅行会社ビコの李さんによれば、最大の訪日市場である韓国からの訪日旅行は、FITは6-7割回復しているという。
ただし、「団体旅行、MICEの回復が遅れています。私の経験では外的要因で1回さらわれた旅行需要が回復するのに10カ月はかかります」
観光庁の山田審議官は9・11後やスマトラ沖大地震後の状況を参考に、回復には3-4年かかるのがトレンドとの見方を示した。
これをいかに早めるかが問題で、重点国でのプロモーションの展開と、「今そこに行く明確な理由のある旅行商品」の造成の2点が重要だと指摘した。
プロモーションはターゲットを絞ることで効果を狙う。「訪日旅行が回復途上の国については、メディアや旅行会社などのプロをターゲットに、回復基調の国については一般向けに行っていきます」
訪日旅行回復への課題もいくつか指摘されたが、李さんは、構造的な問題としてインバウンドに対する日本の旅行会社の姿勢に疑問を呈した。
「インバウンド促進のプレーヤーに、日本の旅行会社の顔が見えません。インバウンドに取り組もうという危機感が伝わってきませんし、2千万人が日本に来ることに自信がなさすぎます。確信を持って取り組んでください」
これには沖縄ツーリストの東さんも同調し、「旅行業の伸びしろはインバウンドです。みんなでインバウンドの神輿をかつぐことが日本の力になります」と呼びかけた。
国観連の佐藤さんは、インバウンドを増やすには国内旅行へのテコ入れが必要と訴えた。
「国内旅行が低調では、観光地も寂れてしまう。国内の観光を滞在型にするための休暇制度の改善に期待しています」
インバウンドの具体的な阻害要因も例示された。李さんは、日本のホテルのIT化の遅れについて、「お客から旅行会社まではオンラインなのに、旅行会社からホテルの間のオンラインが決絶しています」と嘆いた。
東さんは、港湾のハード、ソフトがまったくできていない手厳しい。
「外航クルーズが着くたびに、毎回、バス40台を港につけるつもりなのか。しかも、荷物と同じ場所に乗客を降ろして。東京に住んでいる人が、自分は離島に住んでいると思うことから、インバウンドの推進は始まると思う」