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新型コロナをやり過ごす 今はダメだけど戻ってくる 

今日のゲストは自転車ツアー男性6人とカヤックツアー女性1人の計7人だった。自転車ツアーはオーストラリアからのグループで、1人はリピーター。今回は友達5人と一緒に参加してくれた。白馬で5日間滑った後、京都を観光し、明日、シドニーに帰る。

カヤックのゲストも同じオーストラリアから。キャンベラで看護師をしている。「日本に来ることに危険は感じなかったわ。特に運河にはコロナウィルスはいないわよ」。

コロナ感染拡大の話しをふると、女性はそう答えた。

東京グレートツアーズ代表の肥塚さんに聞いてみた

東京グレートツアーズ(TGT)。2006年に訪日外国人旅行者向けの自転車ツアーを始め、現在は、中央区茅場町のショップを拠点に、自転車ツアー、カヤックツアー、ランニングツアーを実施している。代表の肥塚由紀子さんに、新型コロナウイルスによる感染拡大後について聞いた。

ツアーの前に、すでに打ち解けて。今年2月に東京・茅場町のショップの前で。

-新型コロナウイルスの世界規模の感染拡大でツアー参加のキャンセルは増えていますか。

肥塚 そうですね。いくつかキャンセルのメールはありました。東京マラソンへの出場に合わせて自転車ツアーに参加しようと予約したけど、日本に行かなくなったのでキャンセルするとか。アメリカからは、政府が持病のある人は日本への渡航に注意喚起の情報を出したことで、日本に行ったあと帰国するときの状況が心配でキャンセルするとか。そのアメリカからのメールはとても丁寧で、申し訳なさそうで、来年会いましょうの言葉も添えられていて、暖かい気持ちになりました。

うちは、欧米豪と東南アジアからのゲストが多く、もともと中国本土や韓国からのゲストはほとんどなくて、両国からの訪日旅国者の減少の影響は少ないんです。

※外務省のまとめでは、2月27日現在で、26カ国・地域が日本への渡航禁止やなんらかの注意を喚起している。

東日本大震災の時、ゲストが励ましてくれたんです

-では、ゲストの数はあまり減っていない。

肥塚 それは、ずいぶん減っています。予約のキャンセルは少ないのですが、新しい予約は減っています。従来から、訪日後に予約してくれるゲストも多かったので、予約がないといということは、訪日そのものをやめているのかも知れません。

-多くのメディアが連日競うように、新型コロナウイルスの影響のよるホテルや観光地の苦境を伝えています。ビジネスの先行きを心配していませんか。

肥塚 すごく心配です。楽しい気持ちではありません。でも、なんとか乗り切れるとも思っているんです。それは2011年の東日本大震災を経験したからだと思います。あの時は東京電力福島原発事故による放射能汚染で、本当に、ゲストがいなくなりました。届くのはキャンセルのメールばかりで。でも、たくさんの人が励ましのメッセージを添えてくれていました。数えるとツアーができたのは、3月は4日間、4月は7日間だけでした。それもゲストの数は毎回1人か2人だけです。

-どんな人が来てくれたんですか。

肥塚 原発が水蒸気爆発して、各国が大使館を始め自国民を東京から非難させている時に、オーストラリア人の若者3人が北海道からのスキー帰りのツアーに来たときは、「大丈夫なの。国の家族が心配するんじゃない」と、こちらから聞いたくらいです。彼らは、「あなたたちも暮らしているんだし、東京は大丈夫でしょう」と言っていました。こんなふうに、個別に記憶に残っているほどゲストは少なかったんです。当時のゲストについてもう少し話してもいいですか。

-もちろん。

肥塚 震災から1週間後、ツアーの翌日にショップに来てみると、なにか置いてあって、前日のゲストのカップルからのお酒のプレゼントと感謝のメッセージでした。読んで泣きました。オーストラリアからのゲストで、女性はツアー前からテンションが高くて、ツアー中もステキ、最高、楽しいの連発でした。ガイドの私を励ましてくれていたのかなと思いました。東京でツアーに参加すると聞いた彼女の両親からは、泣きながら早く帰ってこいと、言われたそうです。でも自分たちが消費することが日本の役に立つならと思って、参加してくれたんです。

4月に入って参加してくれたのはツアーのリピーターでした。前に参加してくれたときに買ってくれたTGTのTシャツを着て、笑顔でショップに入ってきました。彼は帰国後にトリップアドバイザーに長いコメントを書いてくれて、本国で日本製の商品を買うのも応援のメッセージだけど、日本に行って、遊んだり、食べたりすることが一番の支援になると思うんだって。やっぱり読みながら泣きました。世界中からたくさんメッセージをもらい、よく泣いていました。それにしても、あの頃の浅草雷門は、本当に人がいなくて。新型コロナで今も皇居や浅草は人が少ないですが、あの時は、もっと人がいなかったんです。

苦難も来るけど楽しい仕事、というより楽しい居場所です

-震災でゲストがいなくなったり、今以上に閑散としている観光地を経験している。

肥塚 そうですね。それに、やがてゲストが戻ってくれたことも経験しました。それで今もこうして営業を続けられています。だから少しは落ち着いて現状を受け入れられているんだと思います。数カ月後だと思うんですが、今回の件が終息するまで、ショップの家賃を払えるくらいにゲストが来てくれればいいなという心境です。

そういえば、震災のときは土日にやることがなくなってしまったので、よくカヤックで遊んでいました。前の年に、2人乗りのカヤックを3艇買っていたんですが、自転車ツアーが忙しくて乗る時間がなかったんです。それでガイド仲間と茅場町からお台場に行ったり、神田川や東京スカイツリーまで漕いだりしていました。都心に、まだけっこう運河が残っていて、神田川では地下水路があるのを見つけたり、小名木川で初めて閘門を経験したりしました。

その時に遊びながら漕いだ水路をつないでルートにして、カヤックツアーを始めたんです。自然の中じゃなくて、高速道路の下を漕いで、楽しいと思ってもらえるんだろうかと、私たちも自信がなかったけど、それがクールだと言ってくれるゲストもいます。この数年は少しずつゲストも増えています。まだしばらくはゲストが少ない時期が続きそうですから、なにか遊びながら、ゲストが戻ってくるときにできるような、新しいルートづくりや、ツアーができたらいいですね。

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