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観光立国にグレーター・チャイナの認識を

10/10/01

日本総合研究所の寺島実郎理事長はこのほど、日本旅行業協会(JATA)が開いた国際観光会議で「世界の構造転換とツーリズム産業の行方」をテーマに基調講演し、「グレーター・チャイナ」を中心とするアジアの成長が「すべてのビジネスが視野に入れるべき基本」などと話した。

寺島さんは1990年以降の約20年間で、日本の貿易総額に占めるアメリカのシェアが27%から14%に減っているのに対し、中国は4%から21%へ拡大。さらに中国に香港、マカオ、台湾、シンガポールを加えたグレーター・チャイナで31%、アジア全域では50%を占めるまで拡大していることを紹介し、「このことを認識することが大事」と話した。

こうしたなか、尖閣諸島での漁船衝突事件後については、「大きなトレンドでは悲観の必要はない」との見方を示し、むしろ今後、グレーター・チャイナから年間千数百万人、韓国から年間400~500万人が日本を訪れることに対し、「そうした覚悟がありますか」と問いかけた。

また、寺島さんは2010年版の通商白書の予想値などを引用しながら、グレーター・チャイナやインドを中心とするアジア圏の中間所得層の拡大にも言及した。

アジアで、可処分所得が5千~3万5千ドルの中間層が2000年に2億人だったものが、09年には9・9億人に達し、10年後の2020年には20億人に増加する。このうち富裕層は2・3億人を占め、これはEUを上回る。
 寺島さんは、「アジアにうねりのようなエネルギーが起きている。あらゆるビジネスで視野に入れるべき基本」などと述べた。

訪日客拡大の鍵としては、羽田空港国際化とLCC(ローコスト・キャリア)をキーワードとしてあげたほか、「骨太の観光立国論」が必要だと指摘し、1例として「パリ・ジュネーブモデル」をあげていた。

両都市には国連機関や国際貿易機関があり、年間40万人の国連関係者や多くの企業関係者、ジャーナリストが「行かざるを得ない」環境がある。これをパリ・ジュネーブモデルと呼びながら、「安売りだけでなく、質の高い来訪者を引き付ける装置が必要」と国際機関の誘致や、羽田空港の後背地に医療ツーリズムを受け入れる医療特区を設置するなど、後背地の活用策を提言していた。

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