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休暇分散化、近畿は反対が多数 財界や観光関係者が議論

11/03/30

観光庁と近畿運輸局は3月7日、大阪市内のホテルで「休暇取得の分散化に関する近畿ブロック意見交換会」を開いた。関西財界や観光関係など各分野から代表者15人が出席し意見を交換。政府が目指す来年秋からの先行導入は賛成の声が聞かれたものの、休暇分散化そのものに対しては反対意見が多数を占めた。

秋の先行導入は賛成の声も目立つ

休暇分散化は地域ごとに大型連休をずらし旅行需要を喚起することに加え、有休取得を促し、国民のライフスタイルの変革を目指すもの。企業活動など国民への影響が大きいほか、ブロック制への疑問などの問題が指摘され、政府は現状、秋の先行導入とブロック分けの見直しを議論する方向に転換している。

意見交換会では、観光関係者でも意見が分かれた。旅行業界からは、日本旅行業協会・日比野健関西支部長(JTB西日本社長)が「観光庁の需要創出の試算はほぼ当たっているとみている。統計を信じないと前に進まない」と、総論で賛成を表明。「休みが取れないから旅行に行かないという消費者が多く、休暇改革は効果的。着地型が進む現状からも秋の連休で地域活性にスポットを当てた企画が出てくる」というプラス面を指摘した。

対して、宿泊施設側は国際観光旅館連盟・西村肇近畿支部長(西村屋)が「祝日の歴史的意義や地域間競争の激化、一極集中への懸念で旅館の3分の2が反対。消費者の目が海外に向き、国内市場は縮小する。旅館は地域にとって雇用面でも大きな存在。絶対に守りたい」と、国観連として反対の意思を示した。

金井啓修御所坊社長からは「休みを固めれば売上が上がるというのは短絡的。発想を変えて、例えば6月の閑散期に有休取得を促した企業を安く受け入れるなど逆手の発想で四季を利用できないか。発想を柔軟に」という提案がなされた。

全体的な意見では、秋の先行導入に絞ると「休暇分散は保留だが、秋休み文化の定着は賛成。国民の間に議論を巻き起こすことに意義がある」(阪南大学国際観光学部・吉兼秀夫部長)のほか、「日本の歩みが止まるなか、やってみるのもいい」「新しい挑戦として基本的に賛成。地域活性化や教育などに生かせる提案を」「経済にも効果がありそう。ブロックの問題もコアの休日をつくると解消される」といった賛成意見が目立った。

一方で、休暇分散化自体について反対意見が続出。「観光戦略が見えない。休み増加で人が来るというのは古い」(関西経済同友会・帯野久美子常任幹事)「小手先の戦略。将来を見据えた施策を」(大阪商工会議所・小嶋淳司副会頭)のほか、教育、金融分野からも不安視する声が相次いだ。行政からは「国民のコンセンサスも得られず、発展性も何も見えない状態の見切り発車は安易で幼稚な案。国家としてやるべきではない」(近畿市長会・蓬莱務会長=兵庫県小野市長)という断固反対の姿勢も。

そのほか「日本人に休む文化を定着させるべき」「有休を気兼ねなく取得できるような政策を」など有休取得促進が先決という声が多かった。

意見を聞いて、観光庁の武藤浩次長は「反対意見が多いが、観光庁も有休取得促進が先決。分散化は無理にできる話ではないので賛成多数に転じてから」と応じた。

議長を務めた、大阪府立大学の橋爪紳也特別教授は「反対意見は強く明快、賛成は秋に前向きという印象」とまとめ、観光業界については「宿泊と旅行業間で議論を深めてほしい」と要望した。

この日の内容は、近日中に予定される第3回休暇改革国民会議に近畿の意見として反映される。

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