旅館経営「負のスパイラル」脱却のカギは投資 観光庁、分科会の報告書まとめる
観光庁は7月15日、5月から開いてきた「旅館への投資の活性化による『負のスパイラルの解消』に向けた支援のあり方に関する分科会」の報告書をまとめた。地域の旅館が抱える構造的課題の解決へ、投資を生かして生産性向上を図るスキームについてまとめている。
同分科会は、1月の観光戦略実行推進会議で、旅館産業が経営に苦しむ要因のひとつとして、施設への投資の停滞が「負のスパイラル」を生んでいると指摘、経産省や金融庁などと連携した検討が必要されたことから設立された。東京女子大学の矢ヶ崎紀子教授を座長に各省庁や自治体、金融、旅館を構成員に、旅館への投資の呼び込みや面的再生、生産性向上を図るための課題の整理・支援策について5月から3回にわたり検討してきた。
報告書ではまず、旅館産業の構造的課題を抽出。積極的な投資やマーケティングの欠如していることから旧来型の事業モデルから脱皮できず、赤字が続き、施設も老朽化―という「負のスパイラル」が大きな課題で、新型コロナウイルスへの対応という新たな課題も生まれたことも重なったことから一定の投資の必要性を説いている。
「負のスパイラル」脱却には、地域経済活性化のためにも旅館の再生や新陳代謝の促進が不可欠。そこで、地域連携の核となる旅館が地域全体のけん引役として新陳代謝の促進に取り組めるよう、関係省庁や金融機関の支援制度についてわかりやすい支援策が必要だと提言している。
支援の方向性としては、(1)観光産業等生産性向上資金や観光遺産産業化ファンドの活用を念頭に置いた新たな仕組みの創設を支援(2)地域旅館の新陳代謝の促進に向け、経営困難な旅館に対し、新規の設備投資を行う担い手となる地域旅館統合プラットフォームを創設、地域の有力旅館など担い手に転貸するなどして地域旅館の再編を促す(3)地域旅館全体で仕入れやマーケティングなどを一元的に行う「地域旅館共通機能プラットフォーム」を創設―などで地域全体での生産性向上と高付加価値化を図る。
今後、報告書の内容を踏まえ、関係機関と連携した投資スキームの構築を目指すという。