地域連携研究所、第4回大会を岡山で開催 先進地域である秋田・大館や岡山・備前の事例共有
「地域間交流拡大」を強力に推し進め、地域の活性化に向けた課題解決に取り組む地域連携研究所(濵田健一郎理事長)は10月5日、「第4回地域連携研究所大会 in OKAYAMA」を岡山県岡山市の杜の街グレースで開いた。全国から自治体や観光関係者が出席。秋田県大館市や岡山県備前市など同研究所会員の先進事例の共有などが行われた。濵田理事長は「地方の地域同士、地方の自治体と民間企業による有意義なネットワークが構築され、地域の発展につながるきっかけとしたい」と話し、地元からは岡山大会実行委員会会長で岡山商工会議所の松田久会頭が「岡山はかつて、海と川を使った東西南北の交易が行われていた。岡山を訪れてもらい、海と川が生んだ産業を感じてもらいたい」と述べ、大会を契機としたさらなる地域間の連携への期待を述べた。
同大会では冒頭、同研究所最高顧問でかごしま教育文化振興財団の森博幸理事長が「コロナ禍で行われた鹿児島大会には、全国各地から約900人が集まった。北前船を契機とした取り組みは、未来の一層の発展、地域間の枠を超えた相互協力へとつながっている。大会を通じて、互いの信頼と協力の体制が強固となり、協働での事業や活動が発展し、一層の地域間交流の拡大を期待している」とあいさつ。同研究所自治体会員制度共同会長で岡山市の大森雅夫市長が「北前船の輪が広がっている。晴れの国岡山でその輪をさらに広げていきたい」、同研究所企業会員制度共同代表で日本航空の清水新一郎副社長は「大会はつながる会であり、地域課題を解決できる会だ。参加するだけでなく、次の仕事につなげてほしい」と新たな輪への参画を呼び掛けた。
来賓からは、木下グループの木下直哉社長兼グループCEOが「新しい事業を行う際には非常に力がいるが、ある一定のポイントを超えると人、物、注目が集まり跳ねていく。まさにこの地域連携はポイントを越えた。ますます大きくなることを期待している」、元観光庁長官で同研究所の田端浩特別顧問が「課題を単一の地域だけで考えても、なかなか解決には至らない。だが、このようなネットワークがあることで、信仰の速度は上がり、成果につながる」、日本スポーツ政策推進機構の河野一郎理事長が「北海道から東北、岡山、九州までスポーツと地域の活動の展開、活動の幅は広がっている。スポーツは今、地方に目が向かっている」と語った。
同大会では、3つのセッションを実施。セッション1では、同研究所会員の取り組みを紹介する基調講演として、岡山県備前市の𠮷村武司市長が「備前焼の欧州での展覧会と販売拡大」をテーマに、備前焼の歴史や製造過程を紹介しながら、イタリアで開かれる国際家具見本市である「ミラノサローネ」に出展して備前焼をPRすることなど、今後の展開を披露した。秋田県大館市の福原淳嗣市長(代読:大館市観光交流スポーツ部の阿部拓巳部長)は「ハチ公生誕100年事業およびフランス・アルザスとの交流」をテーマに、2019年5月にハチ公を縁とした東京・渋谷とのつながりを表す「秋田犬の里」をオープンしたことや、渋谷区との連携の深化として、2022年5月に「交流促進協定」を結び、観光・文化・産業・スポーツを通じた交流を深める取り組みを紹介した。
このほか、欧州連合(EU)日本政府代表部の二宮悦郎参事官が伝統工芸品の販路拡大に成功するための条件として、やる気のある広域の推進母体によるノウハウの蓄積、やる気のある地域の機能、小粒なニーズをつなぎ合わせる取り組みとして地域横断的な人的ネットワークの必要性を説いた。ジェイアール東日本企画の赤石良治社長が「地域創生の現場から」を題に、日本全国共通の地域課題と地方創生の打ち手として、②拠点居住やワーケーション、地産品販路拡大など、関係人口を増やす取り組みの重要性を訴えた。
セッション2は、2025年に開かれる大阪・関西万博に向けた取り組みを紹介。内閣官房国際博覧会推進本部の長崎敏志事務局次長が「2025年大阪・関西万博について」、JR西日本の岩城弘明理事営業本部長が「2025年大阪・関西万博に向けたJR西日本グループの取り組み」、BRIDGE MULTILINGUAL SOLUTIONSの吉川健一社長が「観光通訳の国際標準化」をテーマに大阪・関西万博に向けた取り組みを紹介した。
セッション3では、楽天モバイルの矢澤俊介社長が「楽天モバイルによる法人携帯市場の民主化、および岡山県備前市との取り組みのご紹介」、共同テレビジョン(ふるさとJAPAN幹事会社)の関卓也取締役が「新しいメディアプロモーションについて」、SATOYAMA&SATOUMI movement実行委員会の瀬戸由紀男氏が「岡山県備前市との包括連携協定による取り組みおよび地方創生・地域活性化イベントの紹介」をテーマに、各事業者が地域と連携してできる連携策をPRした。このほか、県内企業からナカシマプロペラ、MASCの取り組みが紹介された。
総括では、観光庁観光地域振興部の竹内大一郎観光資源課長が「同研究所には、①未来志向の官民プラットフォーム②自分の故郷に誇りを持っている人の集まり―の2つの特徴がある。セッションからは、観光を支える資源、人材の持続性を保つことの重要性を改めて感じた。観光資源は、伝統工芸品に限らず、文化財や町並み、自然風景といったもの、足や宿といったものを支えるスタッフなど人材を全部が持続可能でなければならない。販路を拡大し、観光客から対価を得て、それらを資源や人材を循環させていく仕組みづくりが必要になる」と評価し、今後のさらなる地域連携に期待した。
地域連携研究所は2021年1月、地域連携を進めるため、北前船交流拡大機構の兄弟法人として設立された。
地域連携研究所では、従来からの「『大都市と地方』の関係で地方振興を図るのではなく、東京に頼らず『地方の地域同士』」が直接つながり、ネットワークを構築し地域の活力を生み出そう」という考えをそのままに、より広域の活動を担っている。
取材協力:ツーリズムメディアサービス(https://tms-media.jp/posts/14661/)
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