がんばれ和歌山 JTB西日本が熊野三山めぐる復興応援ツアー
JTB西日本(日比野健社長)は1月28―29日、熊野三山をめぐる1泊2日のモニターツアーを実施した。昨秋の台風豪雨以降、風評被害対策を進める国土交通省近畿運輸局の事業の一環として企画したもので、参加者は熊野古道の清掃活動を行ったほか、旅行後にはSNSやブログなどで南紀観光の安全を広く発信するよう求められていた。
ツアーは「熊野三山めぐりと南紀勝浦温泉2日間」。熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社に参詣し、語り部ガイドの案内で大門坂など熊野古道を散策する内容だ。12月19日に販売を始めたところ、定員の150人がわずか1日半で埋まる人気ぶりだった。
バス4台に分乗した参加者は、まず田辺市本宮町の川湯温泉へ。ここも豪雨時は、旅館1階部分が浸水するなどの被害が出た。そのため、名物の仙人風呂が今冬は開設困難と見られていたが、急ピッチの復旧作業で無事にオープンした。この日も何人が入浴を楽しんでおり、ツアー参加者の中にも入浴したり足を浸けている人もいた。
明治22年(1889年)の豪雨で現在の場所に移った熊野本宮大社は今年、遷座120年を迎える。地元の人の話によると、今回も明治の大水害に匹敵する浸水で、もともと本宮大社があった大斎原も冠水したという。今は復旧している。参加者は4祭神を順に列を作って参詣していた。また境内の一部が冠水した熊野速玉大社では、神職の話を聞き参拝。現在は通常通り拝観でき、神職から聞いたお守りになるという境内の梛の葉を捜した。
本宮大社から速玉大社へ向かう道すがら、豪雨被害の痕跡が見られた。被害の大きさもさることながら、復旧のスピードに感嘆する参加者も。南紀勝浦温泉ではバスごとに4旅館に分かれて宿泊した。
2日目は、勝浦漁港で行われているC級グルメフェアやマグロ市場を見学。伊勢エビ汁を味わったり、生マグロの水揚げの様子をカメラに収める姿が目立った。熊野古道・大門坂では語り部ガイドの案内で熊野那智大社、青岸渡寺まで歩いた。さらに、竹ぼうきや熊手を手にして熊野那智大社から続く熊野古道に向かった。班ごとに分かれて石畳の上に積もった枯れ葉や石を取り除いた。約1時間30分ほどの清掃後は、地元の人も「すごい!」と驚嘆。参加者は、見違えるほどきれいなった古道を満足そうに歩いていた。
神戸市から参加していた親子連れは「阪神大震災のときは神戸も風評被害がありました。よそから人が来てくれるって地元の者にとっては励ましになるんです。でも今回は、パワースポットの熊野三山を参拝でき私たちがパワーをもらった感じです」。
兵庫県明石市の夫婦は昨年、熊野古道の伊勢路を12回に分けて歩くツアーに参加していて、まさに最後の1回、那智大社まで歩く回が豪雨で中止になったという。「伊勢路を1年間かけて歩き、次回で完歩だという時に台風でした。是が非でも参加したかったんです」と話し、熱心に熊野古道を清掃していた。
ツアーを主催したJTB西日本和歌山支店の岩本真秀さんは「復興に携われて良かったという声をたくさん聞きました」とし、モニターアンケートの結果などを踏まえ南紀復興を支援する第2、第3のツアーを検討するという。