東北地方太平洋沖地震・「私は残ります」 福島・いわき湯本温泉の小井戸さん
11/03/15
15日午前11時50分ごろ、福島県いわき市・いわき湯本温泉の「旅館こいと」社長の小井戸英典さん(55)と電話で話した。旅館に電話すると電話はすぐに通じ、電話をとったのは小井戸さんだった。
「地震以降、ガスと水道が止まり、温泉地全域で営業休止状態でした。温泉の水位も下がり始めています」。
被災者や工事関係者など救援部隊の受け入れについて、「県内の他のエリアの旅館ではそうした状況もあるようですが、いわき湯本ではありません。放射能の問題も出てきましたし」。
福島第一原子力発電所の放射能漏えい事故で、ちょうど20―30キロ以内では屋内退避指示が出たところだった。
「原発からは50キロ離れていますが、どうなるか分かりません」
電話中に、NHKはいわき市も屋内避難対象だと報道していた。「従業員は避難済みで旅館に残っているのは私だけです」。奥さんと子どもは避難の準備をしているところだそうだ。
「準備しながら、どこに避難するかを考えているところです。子どもや若い人たちには未来を託したいですから。私はここにとどまります。もう歳だし、子どもをつくる予定もありません。30軒ほどある旅館のなかには、私と同じような考えで、社長や専務だけが残っているところがあります」。直前のNHKは被ばくが精巣に与える影響を解説していた。
電気はきているが、重油やガソリンの配給は止まった状態だ。
震災後は消防団員として水や救援物資の配給に携わり、旅館としては避難者への入浴サービスを準備していたところだった。ただ、温泉の水位が下がったことや放射能漏れによる避難対象となったことで、そうした仕事も必要なくなった。
「そちらも気をつけてください。がんばりましょう」。東京から電話をかけたこちらを慮った。