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東北地方太平洋沖地震・午前0時の入浴客 福島・土湯温泉の阿部さん

11/03/15

福島市土湯温泉の旅館、奥つちゆ川上温泉の阿部俊英さんと電話で話した。

「地震の揺れは3分ほど続きサーフィンしているみたいだった。サーフィンしたことはないんだけど」

それほどの揺れでも築50年の木造2階建ての旅館に損傷はなく、付き合いのある設計士も驚いていたという。被害は食器が数枚破損した程度。震災後、土湯温泉地区は停電したが、自家発電でカバーできた。断水もなかった。ただ、当日、旅館を訪れた予約客の宿泊は断った。

BS放送は見ることができたが、地区の共同アンテナが停電の影響でダウンしたため、地上波テレビは見られなかった。自家発電はあるものの、燃料の軽油を確保できないことを想定し、1日当たり2時間程度の運転など省力稼働で長期化に備えた。停電でポンプアップしていた温泉は使えなくなったものの、自噴源泉の温泉は利用できた。震災翌日の午後8時ごろに通電したことで、ポンプアップする温泉も利用できるようになった。

その日の深夜、知り合いが風呂に入れてくれと訪ねてきた。当時、福島市内は多くの地域で断水しており、現在も断水している地域がある。

午前3時ごろにも「風呂に入れませんか」と問い合わせがあり、知り合いではなかったけど、受け入れることにした。

友人を車で拾いながら行くので着くのは1時間後くらいになるという。早朝の4時半ごろに来て入浴して帰った。

「市内の人で、あちこちの旅館に問い合わせたらしい」

クチコミで広まったのか、その日は結局200人程度の入浴客があった。多くは福島市内の住民で知り合いも多かった。

「阪神大震災のあとで、有馬温泉の金井さん(御所坊)から、震災後に旅館は野戦病院のようになるし、そうした避難先としての役割を果たすべきと聞いていたので、電気が回復した段階で入浴客を受け入れることは決めていました」

同旅館では宿泊客へのサービスに特化するため、通常は日帰り入浴客を受け付けていない。現在は、サイトに入浴の受け入れ案内を掲載している。

ガソリンがないからか14日ごろから、車の通行量が目立って減っている。

「メーンバンクに頼まれて断水している市街地まで水を運んでいったんだけど、ちょっと前の北京みたいだった。自転車ばかりが走っていた」

東京のガソリンスタンドも売り切れが多いと伝えると、「不急であれば給油は控えて、こちらに回るようにしてほしいな」といわれ、なるほどと思った。

数年前に離婚し、小学5年から年長までの男の子3人は元妻が引き取っている。電話の向こうで男の子の声が聞こえた。

「地震後に預かってほしいと頼まれ、子ども3人が旅館に来ているから。温泉もあるし、食べ物のストックもある。旅館は子どもにとって安心して過ごせる場所だと思う」

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