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東北地方太平洋沖地震・避難住民で旅館いっぱいに 福島県・中通りエリア

11/03/17

福島県の「中通り」の旅館ホテルが、避難する被災者で膨れ上がっている。

福島県旅館ホテル生活衛生同業組合によると、17日現在、福島市や郡山市など中通りにある旅館290軒のうち、地震による建物被害や断水などライフラインの確保ができないことから4割程度が休業状態にあり、残り6割の旅館で被災者の宿泊や入浴を受け入れている。

いずれも満館の状態で宿泊者数は6千―7千人にのぼるとみられる。

被害が少なかった会津エリアの旅館にも避難先は広がっており、会津東山温泉だけで5千人程度、会津エリア全体では1万人程度が旅館を避難先としている。

同組合では震災後、昨年9月に福島県との間で交わした「災害時における宿泊施設の提供等に関する協定書」に基づき、県の依頼を待たずに自主的に被災者を受け入れることができる旅館のリストづくりに着手していた。当初は津波による被災者の受け入れを想定していたが、その後、福島第1原発からの放射能漏れに伴う避難指示によるものや自主的な避難者が急増、中通りの旅館は数日で宿泊利用者でいっぱいになった。

福島県内で津波被災や放射能漏れによる避難住民は全体で7万人以上とされ、このうち行政の指示に従い避難所などに避難している人以外に2万―3万人が自主的に避難しているとみられるという。こうした人たちが中通りや会津エリア、また、新潟県や栃木県など隣接する県の旅館に避難先を求めている。

多くの避難住民であふれる旅館だが、受入態勢は万全ではない。一部地域で断水が続いているほか、食材が不足、重油、ガソリンなどの燃料がまったく手に入らない施設が多い。多くの旅館では暖房がないことや食事を出せないことを了承してもらった上で宿泊を受け入れている。

被災者の受け入れが、宿泊費を国費で賄える災害救助法による福島県からの要請ではないため、宿泊料金は旅館の判断に任されている。福島県でも、そこまで手が回らない状況という。

福島県旅館組合の佐藤精寿事務局長に聞くと、「食事も暖房もない旅館では、1室1千円程度で受けているケースもあるようです。ビジネスという考えではないですので」。

燃料が手に入らないのが、一番きついという。旅館で入浴ができても、そこまで行く足がない。乳児や高齢者、病人を抱えている家族は最低限のガソリンを残しておきたい。30度前後の温泉では燃料がなく加熱できないため入浴利用も受け付けることができない。

「ローリーも動き始めていますが被災地優先は理解できるし、こちらにはいつ回ってくるのか分からない状況です」

避難住民の受け入れではもう1つ憂慮されている問題がある。

「岩手、宮城と違い、福島は津波と放射能漏れという二重の災害に見舞われています」

放射能漏れや被ばくの健康への影響についての評価はむずかしい。旅館では同じ県民を救済することに躊躇はないが、宿泊客のなかには、避難指示方面からの避難住民との接触することを心配する声もある。そのため、旅館では現在、避難指示エリア方面からの避難住民に対して被ばくの有無を確認するスクリーニング検査をお願いしている。

「スクリーニングは保健所や避難所で受けられます。避難されてきた方も安心ですし、他の宿泊客も安心できるのでお願いしているところです」

福島県では原発からの放射能漏れで、被災者の捜索も普及作業もできないか大幅に遅れている。

佐藤さんは、「福島県内への物資の輸送を拒否されるような事態もあるようです。正しい情報に基づき、被災者や被災地域をさらに差別するようなことがないようお願いします」と話していた。

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