「直売力」向上と「Tポイント」導入 国観連近畿がネット予約セミナー
国際観光旅館連盟近畿支部(西村肇支部長=西村屋)は2月28日、大阪市北区の新梅田研修センターで「ネット予約倍増セミナー」を開いた。
6回目の今回は、昨今のネットエージェントの手数料値上げ問題を背景に、自社サイトでの「直売力」を向上させようと、サイト集客の実践例や最新のITサービスの活用事例などを紹介。約130人が参加し、若手経営者の発表を聞き入った。
吉井雅康さん(夢乃井)は、大手予約サイトで全国トップを獲得した経験から"行列のできる"サイト運営・マーケティングについて講演した。
集客の重要な要素として、SEOは官公庁や地元観光関係などとのリンクが効果的と指摘。ブログやMixiでお客との親密度を高めることも注力したという。ネットエージェントを利用した集客力向上には、お客の特性を踏まえてプランのキャッチコピーを付けることが必要だと論じた。
吉井さんは「変わったことはしていないが、他と観点の異なる視点を持つことも重要。自分だけでなく業界が協力して発展する意識を持ちましょう」と語った。
パネルディスカッションは、木下学さん(ホテルニューアワジ)をコーディネーターにIT活用術を議論。山本卓治さん(花やしき浮舟園)は共同購入クーポンについて、「PR効果や在庫のキャッシュ化は期待できるが、原価割れやスタッフの混乱などの懸念材料も」と感想を話した。金子憲之さん(びわこ緑水亭)はインバウンドについてユニレズ経由の集客実例を話し、直販強化については坂口宗徳さん(萬波)が「とにかくやってみて効果があるものを続ける」、先に講演した吉井さんが「安いか高いかという2極化した現在の市場を知った上で利益を出すよう努力すべき」という意見をあげた。
また、佐野康治さんがツイッターやフェイスブックを活用した集客事例を紹介。最新技術を駆使し効果を上げている佐野さんの話に感嘆の声が漏れていた。そのほか、じゃらんホームページダイレクトについての検証も発表された。
セミナーを主管する同支部IT戦略部の針谷了部長(滋賀県おごと温泉・湯元舘)はあいさつで、「じゃらんの手数料値上げでこれまでの懸念が現実化しました。今日はネット直予約増加を大目標に様々な角度から学び、検証しましょう。将来の危険性をよく考えながら、がんばってほしい」と呼びかけていた。
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セミナーでは、ネット直予約を増強させる手段として国観連が導入を進めるTポイント制度についても説明。使用対象者や倍率の設定が自由であるなど、システムと利用の概要が解説された。
Tポイント制度の導入は、国観連が考える、ネットエージェントの手数料値上げの対抗策だ。Tポイントは、飲食や物販など各業界69社が加盟する会員数約3600万人を抱える日本最大級のポイントプログラム。旅館ホテル業界にとっては販売手数料なしで送客支援につながるもので、各旅館に加入を促しネットワーク化することで利用者の利便性が向上、集客につながるという"正のスパイラル"を構築しようという考えだ。
セミナーの参加者は「手数料値上げには今後も抵抗を続けていくが、Tポイント導入はいわば旅館側の"最終手段"。かつての旅行会社の通料値上げと同じ波が訪れており、過去の過ちを繰り返さないようにしたい」と話していた。
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