【東日本大震災】東京電力の計画停電 そのとき旅館は
東京電力の計画停電対象エリアに建つ旅館ホテルは多い。旅館では計画停電にどのように対応しているのか。
静岡県熱川温泉の熱川プリンスホテル(定員290人)。最初の停電は18日午後6時20分から午後8時ころまでの約2時間だった。
「震災後の宿泊キャンセルが伊豆半島にも押し寄せています。当日は全館休業状態でしたから、今後のシミュレーションのいい機会になりました」
社長の嶋田愼一朗さんは自嘲気味にそう語る。同館のキャンセルは約2千人に及ぶという。
本来であれば夕食の時間帯。まずは食事処の対応を考えた。
「既存の自家発電システムで電灯系統はなんとかなりますが、念のために食事処に自家発電による明かりを追加しました。ただ、暗さを逆手にキャンドルを使うなどで雰囲気をつくれるかなと思いました」
むしろ、気になったのは冷蔵庫と冷凍庫について。
「停電の時間が分かっているので、鮮魚は取引先の魚屋に預かってもらいました。今後もずっとというわけにはいきませんので、自家発電を追加する必要がありそうです」
冷蔵庫、冷凍庫に加え、温泉を送るコンプレッサーが止まることの影響も大きいと感じている。
かつての群発地震など、伊豆半島も地震や風評に悩まされてきた歴史が長い。そのため自家発電や、停電時に最寄りの階に止まるエレベーターの導入など非常時への対策は進んでいる。
栃木県塩原温泉のやまの宿下藤屋(定員100人)。これまでに停電は4回ほど、1日に2度のこともあった。昨日(22日)は午前9時20分から午後0時20分まで停電した。
社長の渡辺幾雄さんに聞いた。
「キャンセルが多くお客さまも少ないですし、あまり困りませんでしたね。自噴なので温泉は大丈夫ですし、館内の掃除は停電後で間に合うし問題なしでした」
ちょうどチェックアウトの時間帯。クレジットカード決済など対応はどうだったのか。
「うちではカードは扱っていません。明細書などは事前にプリントアウトしておきました」
クレジットカードであれば前日のうちに決済しておくことは必要のようだ。
午前6時20分から9時20分の停電には、もう少し注意が必要になる。
「炊飯器が使えませんから、午前6時ころの炊き上がりにして、保温ジャーに移しました。炊き上がりに比べ味が落ちるのが悩みです。食器洗浄機が使えないこと、エアコンが使えないので客室が寒いのも困ります」
灯油の供給は問題ないが、客室用にと探したストーブは、すでにどこも売り切れだった。
もう1つ気になっているのが機器の故障だという。電子レンジやボイラーの制御盤が壊れたという話を取引先や同業者から聞く。繰り返しの停電が影響しているのかどうか、同館ではプリンターが故障したそうだ。