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【東日本大震災】旅館を中期避難所に 群馬県片品村の即断

11/03/28

震災から2週間が経過し、災害救助法の適用による旅館ホテルへの被災者・避難住民の受け入れがようやく始まろうとしているが、市町村の独自の判断と予算措置、旅館組合の協力で、いち早く宿泊施設への避難者受け入れを実行している市町村がある。

なかでも震災から3日後の14日に1千人規模の避難者を村内の宿泊施設に受け入れると表明した群馬県片品村の対応は、他の市町村にも波及している、みなかみ町(群馬県)、中之条町(同)、湯沢町(新潟県)などが同様の取り組みを始めている。

未曾有の緊急時に、国や県に比べ小回りが利く市町村のスピーディな対応は、今後の日本の災害時における避難民救済のモデルにもなりそうだ。

今でこそ、日本全国で都道府県を中心に避難民の受け入れが進むなか、震災3日後に無料で1千人規模の避難民受け入れを表明した人口5千人の村、片品村の対応は初動期あって突出していた。しかも、受入先は体育館等の公共施設ではなく、個室で生活できる旅館や民宿など、民間の宿泊施設だった点も注目を集めた。

3月11日の震災による村内の被災は皆無だった。しかし、別の被害はあった。東日本の他の多くの観光地と同様に翌日からの週末を含め、直近の宿泊予約がほぼキャンセルになった。片品村は東京から約180キロ。村内に7つのスキー場をかかえ、宿泊施設も小規模を中心に約260軒ある。

テレビに映る多くの被災者と避難民、厳しい環境の現地避難所、そして空いている客室。村では震災後、旅館組合などと協議し、村の支出で、約1カ月程度、避難民を宿泊施設で受け入れることを決めた。

翌15日には群馬県に対し、福島県からの要請があれば受け入れが可能であることを伝え、同時に情報収集に動いた。なにが必要かを把握するため、先発隊が福島県相馬市を訪れている。毛布、水など、相馬市から依頼のあった支援物資も併せて搬送した。

福島県の要請で、実際に受け入れたのは相馬市ではなく、南相馬市からの避難住民920人。18日に23台のバスで現地を出発、約7時間かけて片品村へ移動した。全員が宿泊施設に入ったのは18日深夜から19日の未明にかけてだった。

3月25日現在、片品村には43軒に913人の避難住民が滞在している。村から宿泊施設へは3食付きで1人当たり1日2500円が支払われる。金額については、宿泊施設が行っている人道的支援に対する村からの補助としていの位置づけだが、国、県では先週になって全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会との間で、災害救助法の適用で宿泊施設に1人当たり5千円程度を支払うことを確認しており、今後は村への支援策として、こうした制度の運用が求められる。

片品村は国立公園尾瀬で福島県桧枝岐村と隣接する。しかし、福島県とつながる幹線道路はなく、避難住民の移動に7時間かかるなど、福島県沿岸地域と移動の便は悪い。片品村を動かしたのは被災地との距離ではなかった。

片品村村づくり観光課では、「片品村は自然災害の少ない村です。岩盤のせいなのか地震にも強い。村長が災害のない村として片品村をPRすることもあるほどです。そうした意識や、災害のない場所でゆっくりしてもらいたいという気持ちが、村としての素早い対応につながったのかもしれません」と話していた。

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