上松屋の栄村震災復興プランで19人来館
震度6強を記録した長野県北部地震から1年が経った3月12日、長野県別所温泉の旅館、上松屋(うえまつや)の倉沢章社長から、「1年が経ち、村民も旅にでる気持ちになったのでしょう。本日、栄村から19人が来館します」とファックスが届いた。
東日本大震災の翌日、長野県北部の栄村を震度6強の地震が襲う。地震による死者3人すべてが栄村での被害者だった。家屋33戸が全壊、田畑865カ所のほか、道路や橋梁などが大きな被害を受けた。地元では栄村大震災とも呼ぶ。
人口2300人、65歳以上の高齢者が占める割合が4割を超える栄村の復旧は、1年経っても道半ばの状況だ。
倉沢さんは震災から半年経った昨年9月から、栄村のバス会社「森宮交通」と共催し、栄村村民を対象に往復送迎バス付き宿泊プラン「震災復興祈願 北向観音と別所温泉の旅」を始めた。
地震発生の3月12日を忘れないよう料金は3120円、設定日も毎月12日前後にした。2012年は1-7月の毎月と9月にプランを設定し、告知には栄村役場も協力した。
プランは、往路が栄村役場を13時30分に出発し上松屋に16時着。復路は上松屋を10時に出発し、生島足島神社を観光し、栄村役場に13時に着く。最少催行人数は10人。
しかし、今年2月までの6カ月間、プランの利用者はなかった。そうしたなか、3月12日、栄村から4組19人が初めてプランを利用して上松屋を訪れた。温泉に入ってもらい自慢の料理を楽しんでもらった。「じょんのびしたよ」とお礼の言葉に、倉沢さんはプランを続けてよかったと思う。
倉沢さんが宿泊プランを思い立ったのは、震災後、上松屋入社3年目の島田学さんと一緒に、栄村に住む島田さんの祖父母を見舞ったときのこと。
「主に高齢の人たちが復興に取り組んでいる姿に感銘を受けました」と倉沢さん。栄村の島田茂樹村長とも面会し宿泊プランの実施を申し入れた。
19人が宿泊した翌13日、倉沢さんはプラン参加者らとともに別所温泉の北向観音に復興を祈願したあと、島田さんとともに送りのバスに同乗した。栄村役場を訪問し島田村長に館内募金箱などで集めた義援金80278円を手渡した。