東京のホテルから:外客戻った時「これぞ日本食」の評判夢見て
年末より行燈旅館は一階を全面改装しました。都内にホテルがたくさんできる中、お客様に対して選択肢を増やし、差別化を図っていくためです。
行燈旅館も今年で創業19年目を迎えました。創業当初は低価格、泊食分離の先駆けとして東京に旅館をと思いましたが、昨今はそれが当たり前、必要以上に簡素化が進んだように思います。そこで行燈旅館は時代を逆に戻し、厨房機器を充実させ朝、昼、夜の三食を提供することに踏み切りました。
18年以上海外のお客様と向き合う中での数多い質問の中の一つに、「普段日本人が食べている和食を食べたい。お店を紹介してください」というのがあります。この質問に答える時しばしば迷う事がありました。確かに街には昔ながらの定食屋さんも和食のチェーン店もあります。しかし、ハッキリと「ここだ」と、言えるお店があるかと言うと、ありそうでなさそうで紹介するのに戸惑いました。お客様の求めるものは高級懐石料理店や和食チェーン店ではなく、普通の日本人が毎日口にしている普通の日本食なのです。
そこで旅館内に新設中だった骨董茶屋「福行燈」では毎日、旬の魚と野菜を市場で仕入れ、お客様には日本人が普段食べている、言ってみれば「石井家のご飯」を提供したいと思うに至りました。時には中華であったり、洋食であったり、お母さんの体調や季節やらで、料理が毎日変わるような献立を提供したいと。
外国人観光客は蒸発しましたが、毎日いろいろな料理を家族で試行錯誤しながら創作しています。コロナ渦の最中、悲惨な状況ですが、いつの日か外国人観光客が戻ってきた時に、「これぞ日本食」なんて、思っていただけるのを夢みながら。
(台東区・三ノ輪の行燈旅館経営者)
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