レイクリゾート定着図る 旅館大学セミナー、池の平ホテルの事例学ぶ
リョケン(佐野洋一社長)は昨年12月に長野県・白樺湖の池の平ホテルで第168回旅館大学セミナーを開催した。「地域観光をけん引し続ける池の平ホテル新本館が表現する『高原レイクリゾート』の未来を」テーマに開き、旅館ホテルなどの関係者160人が出席した。
セミナーでは、2023年4月にグランドオープンした池の平ホテル&リゾーツの矢島義拡社長が「リゾートから100年越しのむらづくり―持続可能な地域づくりを念頭に置いた新本館改築―」と題して講演した。
その中で、矢島社長は農地改革から始まった白樺エリアの観光地域づくりを紹介したあと「1967年の開業当時から営業してきた本館は、客室からレストランや大浴場までが遠く、お客様にご不便をおかけしてきました。スタッフにとっても動線が悪く作業効率に問題があり内外とも共に満足度が低い状況でした」とリニューアルに踏み切った理由を説明した。
オープンに伴い新本館にロビー、フロント、レストラン、大浴場、土産処を集約。客室73室を新たに設け、東館・アネックス館の既存客室の改修も行い、客室総数は245室となった。
「湖との距離感を考えた空間づくりにこだわり、テラスや温泉ではお客様がゆっくりと時間を過ごし、湖をより身近に感じていただけるようコンセプトを『THE LAKE RESORT―新本館が表現する白樺湖との一体感』としました」と述べ「『信州五感のショーケース―地域の魅力を体感する空間づくり』をキーワードに館内のしつらえや食事、土産などは長野県の事業とタイアップした商品づくりに取り組みました」。
また、周辺環境整備にも言及した。白樺湖周辺は、古くからの地主で構成される財産区が土地を保有管理し、宿泊施設や別荘地に土地を貸し付ける格好になっていた。そのため、建物の所有権や解体費などが複雑に絡み合い、閉鎖したホテルや別荘などが廃墟のまま取り残されていた。19年になり、財産区自らが負担し、白樺湖畔に面して景観を害していた廃業ホテルを撤去。22年には観光庁の廃屋撤去の助成金を活用し、廃屋の解体や跡地活用を行うなど地域一体となった取り組みが進むようになった。
そうした中、茅野市と立科町が22年に合同で「レイクリゾート構想」を発表。池の平ホテルをはじめとする民間事業者と行政が協力し白樺湖、近接する女神湖、蓼科湖の高原地域一帯を“日本のレイクリゾート”の象徴的なエリアを目指すまでに至った。
矢島社長は「欧米などによくある『レイクリゾート』の概念を日本に根付かせるため、ライフスタイルやリゾートでの過ごし方を定着させるための役割を担いたい」と話し、今後の展望を伝えていた。
一方、リョケンの佐野社長は「根を下ろす経営 アイデンティティを確立せよ」とし講演。「コロナ禍の脅威が去り、観光需要はほぼ回復しましたが、旅館の件数は減少を続けて人手不足は大きな課題になっています。その一方、大資本や外国資本による宿泊施設が次々に誕生している姿を見ていますと『観光バブル』の様相です」と指摘。
コロナ禍後の厳しい状況下のなか市場に挑むには①コロナ前比で見ない②30年あまり続いた常識から抜け出す③改めて世界から日本を見る④人の問題の仕切り直しをする―の4つの視点を紹介。それを踏まえ24年の旅館ホテルの経営指針として「根を下ろす経営」を重視し顧客、人・組織、地域の3つに根を下ろしていく重要性を訴えた。
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