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日本秘湯を守る会が創立50周年 “岩木イズム”の継承発展へ全会員参加

24/05/02

日本秘湯を守る会(星雅彦会長=新潟県栃尾又温泉・自在館)は3月13日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールで、創立50周年記念式典を開いた。式典には現在の全会員144軒が出席したほか、来賓および1千人を超える応募の中から抽選で選ばれた一般観覧者を含めて500人が参加した。

星会長は、地熱発電など全国各地で開発が進み温泉資源への影響が懸念されるなか、日本秘湯を守る会の創始者である岩木一二三さん(朝日旅行会=後の朝日旅行創業者)の基本理念である「旅人の心に添う 秘湯は人なり」を伝えていくことが日本秘湯を守る会の役割であると述べ「これからも小さい宿が支え合って、温泉文化や地域文化を後世に伝えていかなくては」と訴えた。

日本秘湯を守る会

「温泉文化や地域文化を後世に伝えていきたい」
と話す星会長

日本秘湯を守る会50年の総括として講演した佐藤好億名誉会長(福島県二岐温泉・大丸あすなろ荘)は「“岩木学校”では人はなぜ旅に出るのか、宿はどうあるべきかを考え続けるということを学びました。経済効率だけを求めると薄っぺらな心になってしまうし、自分だけが生き残ればいいという考えでは、秘湯は守れません」と“岩木イズム”を紹介し、地熱開発に関しては「温泉の減温や減衰が起きないようにするだけでなく、情報開示もしっかりやってもらって、互いに歩み寄りながら温泉を守っていきたい」と語った。

2010年にマンガ大賞を受賞し映画化もされた「テルマエ・ロマエ」の作者として知られるヤマザキマリさんが記念講演。イタリア留学中、文化の違いで浴槽に入る機会がなくなったことから入浴への欲求不満に陥り、その副産物として誕生したマンガが「テルマエ・ロマエ」であることを紹介した。

続いて行われた「秘湯を守り未来につなぐために」と題したパネルディスカッションでは、日本秘湯を守る会会員の若手経営者がパネリストとして登壇。かわいいお宿雲見園(静岡県・西伊豆雲見温泉)の髙橋大志さんは「家業を継いでから感じたことは、秘湯とは旅人とのつながりが大切だということ。お客様と接し語り合うことが今一番の勉強です」。

大平温泉滝美屋(山形県・米沢市)の安部里美さんは「2年前に雪害と豪雨の被害を受けましたが、地元の仲間や秘湯の会会員旅館、お客様の力があって復旧することができました。秘境の宿はサポーターの力が必要です」。

渓雲閣(栃木県・奥塩原新湯温泉)の君島永憲さんは「きつい仕事ですが、お客様から帰り際に『ありがとう』『癒された』と言われるとうれしくなって、この仕事をしていてよかったと思っています」。

パネリストとしても参加したヤマザキさんは「自然と共生していくのが秘湯。秘湯の温泉宿の仕事は地球に生まれてきた喜びを温泉の恩恵という形でプロデュースすることです」と締めくくった。

日本秘湯を守る会は1975年、温泉旅館の大型化や旅を取り巻く環境の変化を憂いた岩木一二三さんが発足させた。小さな温泉宿に心の故郷を求める旅人が戻ってくるという岩木さんの理念に賛同する33の宿でスタート。岩木さんは2001年に亡くなったが、その理念は脈々と受け継がれている。

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