宿泊業の人材確保は 近畿運輸局がセミナー
国土交通省近畿運輸局(岩城裕幸局長)は12月24日、大阪市東淀川区の大阪成蹊大学で「宿泊業における人材確保を考えるシンポジウム―サスティナブルな宿泊業を目指して」を開いた。旅館ホテルの経営者や大学教員らが出席した。
シンポジウムでは労働市場と宿泊業の現状や離職防止策、有効な労働環境の作り方などが話し合われた。基調講演ではリクルートジョブズリサーチセンターの宇佐川邦子センター長が「宿泊業を働き手の視点から見て―宿泊業就労者の現状と課題解決への一歩を考える」と題し講演。
宇佐川さんは「求人募集をかけても有用な人材が集まらない。集まってもすぐに辞めてしまうという話をよく聞きますが、新入社員を育成するシステムができていないから離職率が高くなる」と指摘。年齢に関係なく意欲を重視した採用プロセスの必要性を訴えた。
また「離職率が高くなると評判が悪くなり、求人募集を行っても人が集まらなくなるので、離職防止策を講じ離職率を下げることが最強のPRポイントになります」と述べ、離職率は新入社員に寄り添うリーダーの育成や週15―20時間働ける環境を作ることで、女性のシニア層、週50時間働きたい60代前半の男性の応募が増えるなど労働時間を調整するだけで応募人数が変わってくると具体例を示した。労働時間の長さや休日の少なさが主な離職理由であることも紹介し、休日を増やし業務の効率化を図ることが改善策であることも伝えた。
パネルディスカッションでは宇佐川さんに加えホテルオークラ神戸の石垣聡社長、和悦会浜特別養護老人ホームの水谷紀江さん、綿善旅館の小野雅世女将が登壇。その中で石垣社長は、一度退職した人を再雇用することで成果を出していることを紹介。「一度退職し再雇用された人は会社の知識がある上、ある程度の覚悟を持って仕事をしてくれるので人材になっています」と述べた。
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パネルディスカッションで議論
小野女将は子どもたちが平日に学校を休んで保護者や家族とともに校外学習に取り組む制度「ラーケーション」について説明。子育て世代や主婦層が休みやすい仕組みづくりや業務内容をシンプル化することで人材を確保していると紹介した。
宇佐川さんは「旅館で働くのが嫌で辞めている人は少ないというデータがあります。要は休日の取り方や勤務時間、仕事量を考慮することで離職率を減らすことにつながります。求人募集よりも離職者を減らすことを重視することに力を入れるべきです」と結んだ。
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