訪日客の地方誘客が課題 観光立国推進協が全体会議(2) 観光担う若者をどう育てるか
観光立国推進協議会全体会議で、各委員の発言要旨は次の通り。
日本百貨店協会・好本会長=インバウンド増でラグジュアリーが好調な1年でした。インバウンド関連の売上は前年比80%増で過去最高の6千億円。課題は大都市への集中です。10都市では15%が免税の売上、地方都市は0・5%と低い。地方に行かない状況をいかに改善するのが課題です。売上に占める商品の中身にも課題があります。売れている高級ブランドや高級時計は輸入しているものが多い。日本の文化やモノに敬意を払う旅行者も多く、ジャパンカルチャー・コンテンツの売上も増えているなか、日本のモノをいかに紹介するかも課題です。
日本旅館協会・桑野和泉会長=万博をきっかけに日本全国に足を伸ばしてもらうことに期待しています。ただ地域には課題があります。自然景観がいい立地の施設は交通拠点から遠方でアクセスが弱点。地方交通の充実に配慮してほしい。オーバーツーリズム対策では、旅行者にルールやマナーを求める段階にきていると思います。観光が地域と共生することが大事で、宿泊業が地域のバランスを崩さないよう努めたい。
日本民営鉄道協会・原田一之会長=将来的に、日本の観光、インバウンドを支える人材育成が課題です。観光を担う若者をいかに育てるか、若者が夢を持って産業に飛び込んでくれるのが重要です。地域の足である鉄道の維持のためにも、観光人口増えること、インバウンド旅行者を地域に広げることが必要です。トータルの数字だけでなく、どこに、どれだけ行っているかといった統計も重要です。
日本温泉協会・多田会長=和倉温泉で旅館を営む者として、インバウンドのムーブメントに入れない状況で、心の内はコインの裏の景色です。能登半島は地震からの復興に向けて取り組んでいます。和倉温泉の現状は、旅館4軒が一般営業を始めています。今年はさらに5軒が営業を再開する予定です。2026年度までには8割の旅館が稼働の見込みですが、息の長い支援が必要です。インバウンドの地方への誘客については、温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録に期待し、現在、署名運動を行っています。温泉は地方にあり、登録を得ればインバウンドは地方に向かって行きます。訪日目的に温泉が加わり、地方にムーブメントが起きることに期待しています。協議会でも登録への協力をお願いします。
日本航空・赤坂祐二会長=万博の来場者は2820万人、このうち海外からは350万人が見込まれています。安全安心な航空機の運航とともに、4月に第2ターミナルビルが開業する神戸空港も含め、各空港での受け入れ態勢をしっかり整えたい。グランドハンドリングの人手不足や、航空燃料の不足などで、足を引っ張らないようにしたい。訪日外国人旅行者6千万人に向けては、すでに現状で受け入れが相当難しくなっているなか、地方誘客には空港のキャパ拡大が待ったなしの状況だと感じています。万博を機に、解決に向けた取り組みを加速する年にしたい。
東京商工会議所・田川博己副会頭=ツーリズム産業の基幹産業化を、と言っている中で、先ほどの観光庁の資料にもあるように、観光庁の予算に占める一般財源(当初予算)が減っているのが気がかりです。2018年の216億円が最多で、2025年度の一般財源は89億円です。補正予算は多いですが、補正はその都度の対応です。基幹産業であれば、もともと予算を持つべきで、当協議会で求めていくべきです。
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