KNT―CT、第3四半期決算で34億円の債務超過―新中計で巻き返しへ(2) 事業構造改革で22年度に黒字化を
KNT―CTホールディングスは2月9日、第3四半期決算発表に加え、経営再建へ向けた新中期経営計画を発表した。2021―25年度の5カ年にわたり、厳しい経営環境から持続的成長への転換を目指して取り組むもので、昨年11月に公表した事業構造改革に基づいた内容になっている。消費者との情報格差の解消、直販化やOTAなどとの競争激化、そしてコロナ禍からの旅行需要回復の不透明感という厳しい経営環境に対し、クラブツーリズム事業など強みを生かした旅行事業改革や経営の合理化を進め、22年度の黒字化を目指していく。
新中計で掲げる長期ビジョンは「少子高齢化社会の中で、非日常に加え日常生活を含めた様々なシーンで“楽しさ”を提供する企業」。5カ年で経営資源を集中させた事業展開やコスト構造の見直しなどの構造改革を進め、事業基盤を再構築し、その後の持続的成長へつなげる展望を描く。
旅行事業は。収益力を持つクラブツーリズムや首都圏エリアの法人旅行事業を中核事業に据え、近畿日本ツーリストの個人旅行、団体旅行は地域の特性に応じた教育旅行、地域交流事業などに力点を移す。
収益力を維持しているクラブツーリズム事業はグループの大きな強みとして成長戦略のひとつの核として強化。現在約700万人の会員組織や商品企画力を生かし、ライフスタイル事業として「新・クラブ1000事業」を立ち上げるなど、シニアに特化しない幅広い年齢層や新たな旅行ニーズの取り込みを図る(別掲)。
近畿日本ツーリストの個人旅行事業は、国内、海外ともダイナミックパッケージを中心とするウェブ販売へ軸を移行。旅行相談もアバターエージェントによるオンライン接客「新・旅のコンシェルジュ」を導入(別掲)、DX化を加速させる。これに伴い、国内旅行の「メイト」、海外旅行の「ホリデイ」の商品販売は3月末で終了。個人旅行店舗は現在の138店から22年3月末までに約3分の1まで削減する。直営店の削減について、米田昭正社長は「提携店の所在地との兼ね合いで閉鎖店舗を決めてきた。全国約500の提携店でつくる旅丸会との連携強化でカバーしたい」。また、宿泊施設など約3800社によるKNT―CTパートナーズ会との連携についても「地域素材を発掘、施設で体験商品をつくってもらい、旅ナカ商品として提供してもらいたい」と語った。
近畿日本ツーリストの団体旅行事業は、需要回復が見込めない状況を踏まえ、従来のフルライン・フルスペックの営業展開から教育旅行事業や地域交流事業などに集中。そのため団体旅行支店は現在の95支店をから22年3月末までに約70支店に集約する。店舗・支店の統廃合に伴い、22月4月をめどに地域会社各社も合併する。
強化ポイントのひとつである近畿日本ツーリストコーポレートビジネスによる首都圏エリアでの法人旅行事業は、MICE需要の拡大に向け、4月1日に訪日旅行専門のKNT―CTグローバルトラベルと合併する。
これら事業転換や組織再編に伴い、24年度末までに新規採用の抑制や希望退職の募集などで従業員を現在の約7千人の3分の2まで縮小。役員報酬や従業員給与の減額、事務所面積、海外現地法人の縮小などもあわせて、22年度には構造改革前に比べ約200億円の経費削減を見込む。
新中計ではシステム投資と維持・保守費で380億円を投資する。22年度に営業利益50億円、純利益40億円の黒字化が当面の目標。25年度には売上高3700億円以上、営業利益130億円以上、純利益110億円以上まで成長させたい考えだ。
なお、新中計は「来年度も不確定要素が多いため来年度の数値目標が出しずらく、数値の再設定が予想されるため『骨子』とする」(三宅貞行専務)としている。
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