入湯税還付で地域活性化 下呂温泉トップ3氏で観光座談会(2)
瀧 旅館業界を取り巻く環境は厳しく、宿泊料金が全盛期の半分になっているなかでの営業を強いられています。旅館組合としては少なくなったとはいえ入湯税を有効に活用し、59軒の旅館が共存共栄していける体制をつくることが必要です。
町並み整備の支援や59館の共存共栄を促進
瀧 来年7月からテレビが地デジ化になり、旅館でも地デジ対応のテレビを設置しなくてはなりません。そこで旅館組合としては各旅館からいただいている特別宣伝費用を返還するという形をとり、旅館組合が窓口となって液晶テレビを購入し、下呂温泉の旅館すべてに導入します。
これで、お客様が下呂温泉のどこの旅館に泊まっても「下呂温泉の旅館は、どこでも液晶の大きなテレビが入っている」と認識してもらえることになり、それが宣伝につながります。
テレビの購入は1700台を地元の電気店に依頼したところ直接メーカーと交渉し、台数が多いので量販店と同様の料金で仕入れることができました。工事についても地元でお願いして、必要な経費はすべて下呂市で落ちるようにしています。こういった地域還元型の取り組みは温泉の集中管理も同じですが「下呂モデル」と位置づけたく思います。
テレビ以外でもトイレの温水洗浄便座、営業用の冷蔵庫の問題など、理論付けは必要ですが、旅館組合で対応できるところはそうしていきたい。こういった取り組みは旅館を守るだけでなく、お客様にとっての心地よい空間づくりの提供につながると考えます。
―入湯税の活用についてはわかりました。では、下呂温泉の観光整備の取り組みを教えてください。
野村 下呂市は5カ町村が合併してできた市ですので、それぞれの地区の素材をどのように磨いていくか、また町並みの整備などを支援していこうと思っています。
瀧 下呂市で観光計画を作りましたが、それよりもグランドデザインを描いてほしいし、核になるものが必要です。
例えば愛媛県松山市には道後温泉本館が100年前に建てられ、道後のシンボルになっています。最近では石川県の山代温泉が外湯を2つ造り、兵庫県の城崎温泉も豊岡市と合併する前に温泉地を財産区にし、外湯の整備を行っています。
これはどこもグランドデザインを描き、それにのっとって地域づくりを行ってきたからできたのだと思います。その点をぜひ市長にもお考えいただきたい。
伊東 飛騨には立派な檜があるのですから、檜を使った外湯をはじめ、30年以上前からポスターの絵を描いていただいている漫画家の小島功先生の記念館などは、すべて下呂のシンボルになるものだと思いますし、それに関連づけたイベントなどを開けば集客に結びつく効果があります。
瀧 そういったシンボルがあればテレビの天気予報などの背景にも使っていただける可能性もあり、費用をかけずに下呂温泉の宣伝ができることになるんです。
野村 入湯税を特化し、観光予算を強化するのも初めてですから、その効果を今年1年検証していく必要はあるでしょうが、旅館組合、観光協会の知恵をお借りしながら進めていきたく思います。