"海の秘境 山の秘境"で連携を にし阿波、四万十・足摺観光圏で座談会(1)
徳島県のにし阿波観光圏と高知県の四万十・足摺観光圏の宿泊重点地区の大歩危・祖谷いってみる会(植田佳宏会長=ホテル祖谷温泉)とあしずり温泉協議会(田村卓実会長=足摺国際ホテル)が連携した取り組みを始めている。2つの組織の会員を中心に徳島・高知両県、三好市、土佐清水市の代表メンバーにお集まりいただき、2つの観光圏が連携して何をしようとしているのか、話を聞いた。
交流座談会出席者
【にし阿波観光圏】植田佳宏(大歩危・祖谷いってみる会会長・ホテル祖谷温泉社長)、大平克之(同副会長、大歩危峡まんなか社長)、谷口栄治(同会事務局長、ホテルかずら橋専務)、丸岡進(にし阿波観光圏事務局、徳島県西部総合県民局企画振興部課長 にぎわい交流・観光担当)、桧尾良和(三好市観光課課長)
【四万十・足摺(幡多地域)観光圏】田村卓実(あしずり温泉協議会会長、足摺国際ホテル社長)、武政憲次(土佐清水市旅館組合組合長、ホテル足摺園社長)、山本常好(土佐清水市観光協会会長、足摺パシフィックホテル花椿専務)、田中正(高知県観光コンベンション協会誘致・受入推進部長)、岡崎宏久(高知県観光振興部観光政策課チーフ)、酒井紳三(土佐清水市観光課課長)
【アドバイザー】清水一郎(国土交通省四国運輸局企画観光部部長)、谷本輝重(同観光地域振興課課長)、溝渕祥明(四国ツーリズム創造機構事業推進副本部長)、榎本通也(四国旅客鉄道営業部担当部長)
【オブザーバー】吉岡勝利(大歩危・祖谷いってみる会会員、ホテル秘境の湯支配人)、森岡昭治(同、ホテルサンリバー大歩危事務長)、城野義明(三好市観光課課長補佐)、大境克典(同主任)、林秀樹(あしずり温泉協議会副会長、みさきホテル社長)、福島美佐子(同会員、足摺サニーサイドホテル女将)、小松高志(土佐清水市観光課課長補佐)、山下育(同観光係長)、横山音英(土佐清水市観光協会専務理事)、浜口弘樹(同企画担当)、實島和正(あしずり応援団団長、足摺パシフィックホテル花椿)、山本竜彦(同副団長、足摺国際ホテル)
=以上、敬称略、順不同
「四国全体を売る」 真逆の魅力をコラボ
―なぜ観光圏の連携を考えられたのでしょうか。
植田 私どもの大歩危・祖谷いってみる会は昨年、10周年を迎えましたが、10年前と比べると観光業界は激変し、その中でいろんな施策を講じなくてはならなくなってきました。そういった時期に行政から観光圏の話があり、我々もお手伝いするということでスタートし、今年で4年目を迎えたわけです。
しかしこの4年間、様々なことに取り組んできたものの、旅行会社から商品化するにはエリアがコンパクト過ぎるといった話もあり、エリアとしての限界を感じる場面が出てきました。
そこで、にし阿波エリアだけではなく四国全体を売るという切り口で考えてみたとき、立地的に最も組みやすかったのが足摺でした。
―この話をどのように受け止められましたか。
田村 実は観光圏として認定される前に植田さんから「海と山の秘境」で売っていってはどうかという話はいただいていましたが、両地域が観光圏に認定されたことで、連携話は加速度的に早まったと思っています。
今年1月に交流の第一歩として大歩危・祖谷を伺い、我々の景観とは真逆で驚きました。山が覆いかぶさる景観の大歩危・祖谷と、展望台から270度の水平線が見える我々の景観との違いは大きく、料理の食材も含めて2つのエリアを比べあう形でPRができればと思います。
―大歩危・祖谷いってみる会はこの10年、どのような活動をしてこられましたか。
大平 1998年に明石海峡大橋、99年にしまなみ海道が開通し、四国への入り込み客数は大幅に増えました。ところが2000年3月に徳島自動車道が開通し四国4県を結ぶXハイウエーが全通すると我々の地域は裏街道になり、観光客が来なくなるという危機感を持ちました。その危機感から大歩危・祖谷の旅館5軒が集まり、できたのが大歩危・祖谷いってみる会です。
とはいっても「売り物」はありません。5旅館が共通して持っているものは何だと考えたとき、「温泉」ということになったものの、徳島県には温泉がないというのが当時の一般常識でした。
大歩危・祖谷温泉郷として売っていこうと決めて、パンフレットをつくりセールスに回りましたが、反応はまったくありませんでした。。ただ、ある大阪のバス会社が高速バスを走らせるので、一緒に何かキャンペーンをしないかという話をいただき、これが温泉郷の売り出しのきっかけとなり、JTBとANAがコラボした旅行商品造成に広がりました。
03年には国土交通省と吉本興業が手を組み「温泉観光グランプリ」を募集することになり、それに手を上げたら全国105カ所の中からグランプリを受賞し、西日本で大歩危・祖谷温泉郷は認識していただけるようになりました。
地元とのつながりも重視し、冬まつりや地元にお金が落ちる地域通貨をつくったりしたほか、地域の人と一緒に健康ウォークやJR「大歩危駅」への植樹・清掃、そして次世代の若手の育成を行っています。
―あしずり温泉郷として、この10年を振り返っていかがですか。
武政 足摺は団体主導型で瀬戸大橋、明石海峡大橋、しまなみ海道ができるたびにお客様は増え、93年には100万人が来られました。
現在、足摺には30軒の宿泊施設があり、その中で温泉を利用しているのは10軒です。この10軒が中心になって観光客誘致に取り組んでいます。温泉は89年に掘削し、5年後の94年にあしずり温泉組合ができ、今年4月に一般社団法人あしずり温泉協議会として、新しいスタートを切りました。我々も若手育成としてあしずり応援団を組織しています。
団体型できた足摺ですが最近個人客が増え、個人客を視野に入れた取り組みの必要性を話し合っているときに、今回の連携の話をいただいた次第です。