新法施行後の「民泊」 全旅連・百戦錬磨対談(1) 大市場を旅館へ取り込む
民泊新法(住宅宿泊事業法)が6月15日に施行されて3カ月が過ぎた。民泊の現況は、仲介サイトの動きは―。自身も合法民泊を手がけ健全な仲介サイトの運営事業者で組織する「一般社団法人住宅仲介事業者適正化協会(仮称)」の設立を進める百戦錬磨の上山康博社長と、全旅連住宅宿泊事業法対策委員長の桑田雅之さん(長野県・菅平高原温泉ホテル)のお2人に民泊の状況と今後の方向性について話を聞いた。
違法民泊減少と言われるが ニーズを捉える機会に
―民泊の現状のイメージを教えてください。
桑田 民泊新法(住宅宿泊事業法)が6月15日に施行されたことで、日本だけでなく世界の共通の安全安心な宿泊施設の環境をつくっていくことができればと考えています。違法民泊をなくし、しっかりとした民泊を市場に出すといった点ではいいスタートが切れたのではないでしょうか。
9月末で正式な民泊の登録軒数は9600です。そして観光庁が民泊仲介業者に違法民泊の削除命令を出しているのが4千軒と聞いています。この数字は観光庁からの数字なので間違いはありませんが、民泊新法が施行される時点で民泊仲介業者が、6万5千軒の違法民泊が1万5千軒に減少したと発表した数字は怪しいものでした。
国内で京都の違法民泊を検索すると非常に少なかったので安心しアメリカから京都の違法民泊を検索してみると、ものすごい数の違法民泊が掲載されていました。それを仲介業者に指摘すると「そんなことはない」と言い切るので「我々はきちんと監視している」と伝えたところ、大幅に違法民泊の軒数は減っていましたから、仲介業者が言う数字は要注意です。
上山 6月15日以降、まだ完璧ではない部分もあるかと思いますが、かなり急激なスピードで違法民泊はなくなっています。これは住宅宿泊事業法の枠組みのなかで、海外の仲介事業者も登録制にしたことが非常に大きくかかわっており、これまでの民泊=違法民泊という世の中の間違った認識を変える契機になると思います。
私が現在、民泊に感じていることは、違法民泊が広がった背景には、やはりお客様のニーズが大きかったであろうということです。お客様が望んでいるのは自分の好みに合った宿泊スタイルの選択肢がどれだけあるかどうかだけなんです。その意味合いでいくと民泊が増えてきた成り立ちというのは、そういう需要が世の中にあるんだというコンシューマー側の意思表示です。
違法民泊がなくなっても数千億円といわれる民泊市場は残っています。この市場をルールに則って宿泊のプロの方々がどのように取り込んでいけるのか。その視点が旅館業界にとって重要なことではないでしょうか。
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