“旅行家”としてのこだわり 文化観光研究会会長・薦田光さん企画のツアー
大阪・北浜のレトロで瀟洒なビルの1室に「文化観光研究会」はある。57年に渡って旅行業を営んできた薦田光さんが代表を務める研究会だ。旅行会社時代の常連客だけを対象に、長年培ってきた旅の経験に基づく良質でこだわりのツアーを提供している。「旅行家」を自負し、御年86歳になった今なお旅への興味が尽きない薦田さんを訪ねた。
良質でこだわりのツアー プライド持ち仕事を
薦田さんが「文化観光研究会」を立ち上げたのは2019年3月。それまで自身で経営していた旅行会社、伏見ツーリストを廃業して設立した。
話はずいぶんと遡る。旅行業の第一線で活躍していた薦田さんは当時、客の注文をこなすだけの「旅行屋」であることに嫌気がさしていた。そんな時に観光の語源を知ることになった。
中国の四書五経の易経の一文にある「観国之光」。そこには「国の文化や政治、風俗をよく観察する」「国の風光・文物を外部の人に示す」とあった。薦田さんはその意味に救われたと述懐し会社の企画ツアーを「光ツアー」と名づけた。
観光本来の意義を盛り込んだ光ツアーは「会社の社長や役員、医者や弁護士の参加が多く、見識が高く口の肥えた方ばかりです。そういった人たちに満足いただけるツアーを企画することが楽しみでした」。
その光ツアーの常連客を会員とし発足したのが文化観光研究会。現在、会員は30人。常連客に支持されてきた良質で楽しいこだわりのツアーの企画だけを行い、手配関係はかつて副理事長を務めた協同組合大阪府旅行業協会(OATA)に依頼する形を取っている。
20年から本格的な活動を行っていこうと準備を進めていた矢先、薦田さんに大腸がんが見つかる。加えて新型コロナウイルス感染症のまん延で、ツアーどころではなくなったものの闘病を続け、ようやく体調も復活の兆しが見えてきた。ワクチン接種も浸透し、安心安全を徹底したなかで旅行へ、というムードになりつつある。
「私が思う文化観光にこだわった旅行企画ができるようになるまで、もう少しの辛抱です。以前旅行会社は旅行屋と蔑んで言われましたが、これからの旅行会社は旅行家というプライドを持って仕事をしなければならないと思っています」。
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