政権交代後の宿泊業界は 佐藤義正さん(国際観光旅館連盟会長)(2)
―例年ですと税制改正要望の時期ですが、今年はどんな状況でしょう。
税制要望の場はすでに設けていただきました。10月27日に国土交通省の政策会議が開かれ、そこで民主党の議員や国交省の職員出席による税制要望のヒアリングがありました。国交省関連の12団体が要望を行いました。
事業によるメリット増やす
観光業界から呼ばれたのは国観連だけです。国観連は自民党政権時代から民主党に対しても税制改正要望を行っていて、それで声がかかったんだと思っています。
私は7つの税制要望のうち、国内旅行の所得控除と、旅館ホテルの固定資産税の2分の1軽減について直接話してきました。ある先生からは「これは随分以前からの要望ですか」との質問があり、ほぼ同じ要望を15年ほど続けていることを説明しました。ただ、税制要望が叶わないことにこだわり過ぎることはないというのが私の考えです。国の税収が減っていくなかで、どの政権であっても減税の話が簡単に通るわけがありません。時代が変わったことを認識すべきです。かつては国観連会員に適用された制度や税制の特例も、今はもうありません。じゃあ、国観連に入っているメリットはなんなのか。だから私は事業をやりましょうと言っているんです。事業によってメリットを増やせばいいんです。
サプライヤーを強くしたい
―どんな事業でしょうか。
国観連による宿泊予約サイトの構築が1つです。それからクレジットカードの手数料の引き下げにも引き続き取り組みます。いずれも私たちサプライヤーがもう少し強くなって、カード会社や旅行会社などの流通事業者と対等に話し合いができる立場にならないと大きな進展は望めません。そのためにも組織として団結することが必要です。
私がイメージする国観連宿泊予約システムでは、国観連自らが1300会員の客室を管理し、旅行会社にはそこから客室を仕入れてもらう形です。そうなればサプライヤーの発言力も高まり、手数料率の交渉もしやすくなると思うんです。カード手数料と送客手数料が数パーセントでも下がれば、宿泊産業の経営環境は随分とよくなります。
一方、海外への客室販売事業にも取り組んでいます。宿泊予約サービスを世界展開しているペガサスソリューションズ(本社・米国ダラス)と契約しました。これにより、希望会員は海外の旅行会社約1千社とオンラインで結ばれ、外国人旅行者の宿泊予約が受けられるようになります。初期の設定費用と、成約後に販売手数料が必要ですが、旅館の客室を海外に販売することができる。まだ、契約会員は50数軒ですので、もっと増やしていきたいですね。
旅館が販売チャネルを増やすことがお客様の増加につながるし、販売チャネル同士の切磋琢磨も促すんだろうと思います。しかし、頼り過ぎてはいけません。エージェントへの依存体質から脱却できるようにして、旅館個々の営業力や商品力をつける。このことが国内旅行の活性化につながり、旅行会社のビジネスチャンスも増えます。
―自動車や家電も環境に配慮しているかどうかで選ばれる時代になりました。環境問題への取り組みはいかがですか。
省エネによる経費構造の変革などは経営にとっても必要なことですし、それがCO2削減につながるなら、これに越したことはありません。どうすれば温室効果ガスの排出量を1990年比で6%減らせるのか、また、2020年までに25%削減できるのか研究してみたいと思っています。省エネもそうでしょうし、私も旅館のまわりに植林していますが、小さな積み重ねから、みんなで始めるべきだと思います。また、登録旅館の省エネ機器導入に対するインセンティブなど制度的な問題も研究したいと思っています。