業界発展は地域活性から 日観連・近兼孝休会長―全旅・池田孝昭社長対談(2)
―それぞれ支部、支店はいくつあるのですか。
近兼 現在25支部ありますが組織を再編中で、今年4月ぐらいまでには地方運輸局が所管するエリアと同じ9支部になる見込みです。
池田 我々のところが10支店(47営業所)ですから、再編なさったあとの日観連さんとほぼ同数になります。
近兼 我々が9支部になると、各支部と全旅さん各支店との地域での関係が密接になりますから、地域の振興などで協力できることがあるかもしれませんね。
JRと連携強め列車利用の地旅推進
―地旅博覧会を来年開催されるのには、何か理由があるのでしょうか。
池田 今年12月に東北新幹線が青森まで開通し、地旅博覧会を計画している翌年には九州新幹線が全線開通します。そうなると東北から鹿児島まで新幹線でつながることになります。新幹線が走る沿線には我々の仲間が地旅商品を造成していますので、発地側と着地側とで相互送客しあえるようになるわけです。そういった意味ではJRさんとの連携も大事になってきますので、こちらの方も準備を進めているところです。
「駅長の宿」時代をスローな旅で再現
―日観連もJR、旧国鉄(日本国有鉄道)との関係は深いですね。
近兼 ご存じのように我々の組織は1948年、国鉄が戦前の「鉄道省指定旅館」を改編し「国鉄推薦旅館」という公共企業体として発足しました。50年には「国鉄推薦旅館全国連盟(国旅連)」の名称となり、組織の冠に堂々と「国鉄」が付いていたのですから、組織と名称は変わってもJRさんとの関わりを抜きにして語れません。これもよく言っていることですが、日観連設立当時は「駅長さん推薦の宿」として、地元との関係は今以上に深く、地域の人たちとの信頼関係も厚かったと思います。今年日観連は創立60周年を迎えるのを機に、JRさんとの連携、地域貢献を深めた組織づくりを目指していますので、池田社長が取り組もうとされていることには理解できます。
池田 私が若かった当時は国鉄公認旅行業者という指定制度があり、営業のほとんどが国鉄各駅への訪問でした。国鉄職員の方々へ旅行募集の協力をしていただいていたころを懐かしく思い出します。国鉄公認旅行業者が旅行企画を行い、その旅行商品を国鉄職員の方々と共同で募集するという、旅行業者と国鉄各駅の共催事業でした。その企画商品を日観連会員施設に送客していましたので、旅行業者、国鉄、日観連会員施設が役割分担しながら、お客様に喜んでいただける商品を造成していたことになります。これが今、私どもが進めている地旅のモデルになっています。
近兼 懐かしいですね。人と人とが信頼で強く結ばれていた時代でした。何かと忙しい現代社会においてこそ、私どもは「駅長さん推薦の宿」時代の旅のようにローカル線を利用した「ゆったりとした鉄道の旅」(スロー・トリップ)を消費者に提案をしてみたいと考えております。
池田 ノスタルジーとしての「国鉄時代を思い出す―ローカル列車で行くなつかしき昭和の旅」は、いいと思います。また、かつてアンノン族と呼ばれた女性たちが地域を活性化させた時代、JR各社が30歳以上の女性グループを対象にした企画乗車券「ナイスミディパス」の発売などが行われていました。現在はそれ以上に女性客を抜きで旅行は考えられない時代になっていますので、日観連さんと協力して女性に喜ばれる女性のための宿をクローズアップする試みを行っても面白いかもしれませんね。
(トラベルニュースat 10年1月25日号)
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