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ブランド化戦略を推進 寺前秀一さん(石川県加賀市・市長)(1)

山代・山中・片山津といった加賀温泉郷を有する石川県加賀市は、加賀大聖寺藩十万石文化を核に観光振興を図っている。寺前秀一・加賀市長(観光学博士)に加賀観光の現況を聞いた。

「もうひとつの金沢」城下町・大聖寺を前面に

―加賀観光をどのように捉えていますか。

加賀市の観光エリアは、旧国名「加賀」を冠した市制発足後50年を超え、首都圏をはじめ県外の観光客には加賀ブランドと重なってイメージされています。実際、加賀大聖寺藩十万石文化を形成するものは、加賀ブランドのエキスとなっているものが多いです。

全国一の木地轆轤(ろくろ)挽き物をはじめとした山中漆器、伊万里焼との産地論争が話題の九谷焼のルーツである古九谷、伝統的な手法により天然鴨を捕獲する片野鴨池の坂網猟、北前船主の屋敷などが集積する日本一の大富豪村・橋立地域及び山村集落である加賀東谷地域の伝統的建造物群保存地区など、いずれも加賀ブランドのコアを形成しています。

加賀エリアの観光は、温泉資源だけではなく加賀大聖寺藩十万石文化を形成する文化資源に加え、柴山潟、大聖寺・動橋川流域のラムサール条約登録湿地化など自然資産の観光資源としての振興も必要だと考えています。

北陸新幹線金沢駅開業は、加賀温泉郷訪問客の10%以下とウェイトの低い首都圏からの誘客を増大させる契機です。首都圏における加賀温泉郷の知名度の低さをカバーするため「もうひとつの金沢」である城下町大聖寺を前面に出し、萩・津和野・大聖寺のスローガンのもと、天然鴨料理など加賀市ブランド化戦略を推進したいと思います。

―加賀温泉郷に関するご提言をお願いします。

加賀温泉郷の入湯客数は400万人から200万人に減少しました。旅館数や営業マン、広告量の減少に伴い、トータルでの加賀温泉郷の宣伝力は大幅に低下し、特に若年層への知名度は極端に低いと認識しています。

しかし200万人規模の入湯客数は、全国ベストテンクラスです。これを山代、山中、片山津温泉でばらばらに宣伝していては限界があります。特に巨大マーケットの首都圏にはきわめて効率が悪く、加賀温泉郷も、箱根、別府のように温泉郷で捉える必要性が高くなっています。

明治33年の鉄道開通期、全国の一等待合室に大宣伝を打ったように、今後は加賀温泉郷を前面に出し、加賀山中温泉、加賀山代温泉、加賀片山津温泉といった表現の工夫が必要だと思います。

山代古総湯、片山津21世紀温泉館(仮称)などの温浴施設整備の話題提供や山中道中流し、山代菖蒲湯祭りなどのイベントの実施も、加賀温泉郷全体で戦略的に行う必要があります。このため加賀市が助成するものについては、極力加賀温泉郷のコンセプトで臨むこととしています。

―これから加賀市が目指す観光とは、どういったものでしょうか。

観光事業と観光政策とは峻別されます。税金を使用する観光政策は、外からの人が訪ねてくれる場所を作るという「地域の誇り」が中心となります。歴史文化資源や景観などの振興はもとより、教育、福祉などにおいても他地域と比較しても遜色がないことが観光政策でも重要です。

東日本大震災でも見られる風評被害は観光地の宿命です。そもそも観光とはマスコミと共通性があり、風評を基盤とするため、得をすることもあれば損をすることもあります。被害のリスクヘッジをすることはまさに政策の領域です。顧客の分散化を図るためにも、関西・中京に加え首都圏のウェイトを高くすることが政策課題です。

また近隣地域の顧客ウェイトも高くしなければなりません。そのためにも都市としての金沢にも強くなってもらわないといけません。金沢市の政令指定都市化も一方策として望まれるところです。

加賀市にとって、北陸新幹線の金沢以西の延伸が最大の将来課題です。関西・中京地区とも高速鉄道で直結できるルートが望まれ、福井・石川県境の交流人口を増大させる必要があり、関係市との連携が必須です。

具体的には、白山平泉寺、永平寺、吉崎御坊、加賀市塩屋地区戸田城聖生誕地、大聖寺などを連結させる越前加賀宗教文化街道構想を検討しているところです。

石川県加賀市・寺前市長

加賀市の観光振興戦略
について話す寺前市長

ブランド化戦略を推進 寺前秀一さん(石川県加賀市・市長)(2)に続く

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