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今こそ地旅の力―3.11を経た観光業 全旅・池田孝昭社長―井門隆夫さん対談(1)

株式会社全旅の池田孝昭社長と、トラベルニュースat本紙コラム「CS宣言」の筆者で井門観光研究所の井門隆夫社長に3・11を経た旅行・観光業界の着地型観光、地旅について語っていただいた。2人は、地域が発する情報の必要性と、それを受信し先を読む私たちの感度の大切さを指摘し、観光事業者と地域とお客様の主従関係に汲みしない新しい旅のスタイル「地旅」の意義を示した。(対談は4月4日に実施)

池田さん「5600会員の力を結集」

―東日本大震災、福島第一原発事故とかつてない事態に陥った今、私たちは何をすべきなのでしょうか。

池田 まずもって、我々が経験したことのない大震災で被害に遭われた皆様に、お悔やみとお見舞いを申しあげます。ただ、自粛する気持ちはわかりますが、元気のあるところが頑張り、そのパワーを東日本の皆様に送るのが大切ではないかとも思っています。

井門 私もまずはお見舞いを申しあげます。ANTA会員の中でも相当被害に遭われた方もいると思います。言葉にならない悲しみがあります。特に去年の地旅大賞で優秀賞を受賞した三陸鉄道の三陸の地旅は、田野畑など昔ながらの生活をしている漁村や宮古の魚彩市場などツアーで巡るところが全部被災してしまいました。

だけど、池田社長も仰っていたように、いつまでも悲しんでいても仕方がありません。どこかのタイミングで自粛を解かないといけませんね。

池田 被災した地域の皆様方は、しばらくの間は旅行なんて考えられない。日々の生活が最優先です。そういう中において、我々が今までと同じ感覚では到底仕事はできません。

しかし、もう旅行はダメだという考え方ではなく、発地がダメなら着地があるのです。我々は12年前からその両面でやっていかなければならないと言っていたわけですから。自分の地域にお客様を呼び込むのは、ANTA会員が全国に5600社いる我々だからできるのです。その優位性を武器に、ぜひ自分の地域にお客様を呼び込む。今まさに問われているのは、その原点なのです。

被災地に対して現状、資金的あるいは物的にお手伝いすることしかできないもしれません。ですが、被災地の皆さんと心を一つにすることによって、我々の出番は必ず来ます。インフラが整備され復興した暁には、全国の5600会員に呼びかけて、たくさんの人を被災した地域に呼び込む。そのための準備期間と位置づけて頑張っていくべきだと思っています。

同時にインフラが整備されたら、被災地のお手伝いで何ができるかを現場の会員から情報をいただき、その情報から全国のボランティアをお送りする。そして、その次はお客様と段階的にやっていきたい。私は今ひしひしと感じています。

池田社長井門さん対談

東日本大震災後の旅のスタイルに
ついて意見を交わす
池田さん(右)と井門さん

井門さん「被災地から情報を」

井門 今ないのは現地の情報です。被災地として何をしてほしいのかを取りまとめて送ってくれないと、我々は何をやっていいのかわからない。それが自粛という状況になるんです。現地のANTA会員が、そのあたりの情報を編集して送っていただけたらと思います。

海外ではスタディツアーというカテゴリーがあります。現地へ行ってボランティアをし、同時に消費をして帰ってくる。スマトラ沖地震でプーケットやインドネシアの島々の人たちは、EU諸国からのスタディツアーを受け入れました。実際に現地がやってほしいことを情報として仕入れ、現地へ行ったわけです。なぜ日本にはないんでしょう? できれば東北6県のANTA会員の皆さんが横の連携をとりながら着地情報を発地の我々に発信してほしいです。

池田 本当に現地の情報がいかに大事か。11日に震災があり、翌日東京の本社から東北の皆様に連絡を取ろうとしたのですが...。ようやく現地の支部長と連絡が取れたのですが、私ども準備していたタオルやマスクよりも、後片付けに手押し車が必要だと話していました。いかに、現地の生の声を収集し、それに対応することが大事かと思い知らされました。

3月25日現在、東北各県の会員は全員無事と確認ができましたので、できるだけ早い時期にANTA本部、株式会社全旅へ現地へ訪問できる時期を知らせてほしいですね。

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