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今こそ地旅の力―3.11を経た観光業 全旅・池田孝昭社長―井門隆夫さん対談(3)

井門 今は客観的情報ではなくて、感情的情報が蔓延しています。不謹慎かもしれませんが、秋田県の玉川温泉は0.3マイクロシーベルトの放射能が常に出ている。でも一方で、例えば福島市いわき市は今0.1―0.3マイクロシーベルトが飛んできています。人体に影響のない範囲にも関わらず、福島の中通りとか会津では風評被害に遭っています。玉川温泉と同じ効能が今味わえるはずなのに。だからこそ、現地の皆さんの正確な情報が求められていると思います。

池田さん「付加価値こそ着地型」 井門さん「東北を地旅先進地に」

池田 日本国民全体が風評に惑わされている被害者なんです。着地型商品とは地域の正確な情報が基本です。それとまったく同じで、風評に惑わされないためにも被災された会員の情報がほしいのです。激震地である岩手、宮城、福島、茨城には450社のANTA会員がいらっしゃいます。迅速に情報をいただくことによって、満足とまではいかなくても被災地の皆さんを応援する体制ができます。

井門 地旅はドンとは売れません。最初はANTA会員、次に東北の力になりたいという日本国民、そして一般観光客と段階を追っていきます。今までインバウンド一辺倒だった日本の観光が、もろくも崩れ去ってしまったんです。もう一度内需、日本人の力を信じましょう。

池田 今こそ、一丸となって行動を起こさなければいけません。それがANTA―NETの構築の目的であり、着地型旅行なんです。受入施設の皆さんとも車の両輪でやってきたわけですから、今こそ応援しなければならない時です。

井門 石油危機以降、航空会社はアライアンスという名で提携をしています。身近な自動車整備工場も「ホリデー車検」と名付けて一つのブランドの下で、変わりゆく消費者に対応しようとしています。それと一緒のことで、東北を手始めに手を組んで地旅を造っていくべきでしょう。

池田 観光産業はインもアウトも両方やらなければなりません。オレも行く、アンタも来いという交流です。着地型側の会員は、海外旅行のランドオペレーターなんです。難しいとか、儲からないという論法じゃない。儲かるやり方をすれば儲かるんです。

井門 今までの旅行業って、何か売り物があって手数料をもらって商売しようという発想です。だけど、今回のボランティアなんて無形のものをいくらで売るか考えないといけない。原価ゼロのものに付加価値として売るのですから。

池田 手数料がないと旅行業はやっていけないという考えから脱皮しないといけません。付加価値こそが着地型旅行商品でないとできないことです。

井門 付加価値だらけで、付加価値しかない。

池田 付加価値の価格は、着地が決めていいんですから。今回の大震災で、着地型旅行が大きく様変わりするかもしれません。というよりも旅行業という形の大きな変わり目でしょう。

井門 地旅推進本部ができましたが、東北にも地域本部を作ってはどうでしょうか。東北が地旅の先進地になるかもしれませんね。

「地旅推進本部」が始動

全旅は2011年度から「地旅推進本部」を設置した。池田社長自らが本部長に就き、地旅によるANTA会員の業容拡大、地域活性化をさらに推進する。

具体的には▽全国10地域で地旅地域推進リーダーを選定し、ANTA会員のサポートや行政・地域住民などとの連携促進、地域間相互送客の推進役を担う▽地旅商談会を開催し、発地側と着地側の連携を行う▽地旅博覧会を開催し、特定地域への集中送客を図る―などを事業化する。

また、地旅商品のユニット販売を拡大するため、提携しているJR各社や日本旅行と連絡会議を定期的に開催するほか、ANTA―NETの多言語化や地旅によるインバウンド誘致にも取り組む。会員間取引を活発化させる目的で、全旅クーポンで地旅商品の精算業務の検討も始める。

消費者向けにも地旅パスポートの発行などを計画。旅館団体とも連携し、地旅の推進体制と事業化定着を実現する。

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