人、仕事を引き寄せる 筆手紙道家元・浦川良子さんに聞く「手書き文字の力」
トラベルニュースat5月10日号で紹介した筆手紙道協会の家元、浦川良子さん。コロナ禍の真っ只中、良子さんからいただいた巻き手紙に心を射抜かれた記者が良子さんにお話を伺った。
―巻き手紙を始めたきっかけは?
幼いころから、言葉を綴ったり、文字を書いたりするのが好きでした。それは感性豊かな伯母の影響だったかもしれません。「もうすぐおひなさまの季節ですね」「子供の日は何をして過ごしますか?」「お誕生日おめでとう」などと季節ごとに届く伯母からの手紙やはがきが嬉しくて、楽しみで。電話じゃなくて自分で書いた文字でありがとうの気持ちを伝えたくて私も伯母へ返事を書くようになりました。
仕事でお世話になった方へのお礼、遠方の友だちへの近況伺い、贈り物をする時にひと言添えて、年賀状も封書にして…今でも必ず手紙を書いています。手紙を書くときは読む方に楽しんでいただけるようなおもてなしのひと工夫をこころがけています。手紙を開いた時にはほっと心が和むような季節の移ろいや彩りを感じてもらえたらと、文字と合わせて絵も描くようになりました。
「巻き手紙と言えば…よしこさん。よしこさんと言えば巻き手紙」と言われて…もう30年ほどになります。
―巻き手紙の魅力を聞かせてください。
手書きの文字には、写真と同じくらいの記憶に残る力があり、その人の表情や声色まで想起させる力があります。たった一通の手紙から美意識、感性、人間力と書き手の存在そのものが伝わります。手紙に綴られる言の葉とその人自身の醸し出す印象が重なり人柄そのものが心に残るのです。
ですから手紙とは自分の気持ちを相手に運ぶ一番身近なツールとも言えます。デジタルな世の中だからこそアナログの手書きの手紙がインパクトを与え、印象に残る人になる。結果ビジネスツールにはインパクトから印象深くなりツールとして欠かせないものであり、人や仕事を引き寄せる力強いがあります。私は「まき手紙には魔法のような不思議な力がある」とお伝えしています。
―素人の私でも書けるようになりますか。
上手じゃなくてもいい、心の赴くままに。相手のことを想いながら一文字ずつ綴る手紙は心に響くものがあります。自由に、楽しく、想いを込めて、個性あふれる手紙を書いてください。
書くとは浄化力、集中力、観察力、洞察力を養い、自分を客観的に見つめる時間を持つこと。それは季節を感じながら生活をすることであり、お月様、生け花、本などに興味を持つようになります。自ずと感性が豊かになり人生が変わると考えています。自分だけの世界観を表現できるようになります。
「良子流まき手紙」には型というものがありません。大切な人に宛てた粋で美しい手紙、最後に「想い」という愛をそえて。
―ありがとうございました。
○
浦川良子(うらかわ・よしこ)さん=高校卒業後、美容関係や政治家秘書など多種多様な仕事を経験。その後、おもてなし研究家として独自の感性を生かしたインテリアのコーディネイト、イベントプロデュースなどを多数手掛ける。2019年より筆手紙道協会(商標登録出願中)家元として、筆文字で書き綴る「良子流」の書や巻き手紙の魅力を伝授。また「開運美書家よしこ」として店舗の看板やディスプレイ、パッケージ、広報物のほか様々な創作活動も行っている。「手紙の匠」としてテレビ番組にも出演している。
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