団体旅行は日本固有の文化 池の平ホテル&リゾーツ・矢島義拡社長の思い(1) 不要不急のなか投資決断
長野県立科町の池の平ホテル&リゾーツが今年4月にオープンさせた池の平ホテル新本館。白樺湖畔の立地を全面にLAKE RESORTをうたい、温浴施設やダイニングを充実させたほか、コンベンションホールや宴会場など団体客誘致に注力する方針を打ち出した。「団体旅行は日本固有の文化」と言う矢島義拡社長に、今回の設備投資に対する思い、ねらいを聞いた。
観光業に対しての希望を当地で形に
―コロナ禍の中、大規模な設備投資を決断した理由を教えてください。
当館は建築に制限がかかる国定公園内という立地から、時代ごとにお客様の要請に応じた増改築を繰り返してきました。結果として3館をつなぐ動線が複雑になるなどして省エネ、省力化の観点からのロスも大きく、いずれかのタイミングで大型の設備投資は不可避でした。そこで商品力ベースの底上げと今後の柔軟な改善ができるように、約10年前から2025年をメドに本館の完全改築を計画していました。
コロナ禍に入り、財務状況が毀損した中で弊社に残された選択は、これまでの投資計画を白紙とし大型設備投資という選択肢を今後一切外すことを前提にした事業の継続に専念する、ということが一つ。もう一つは需要減の期間に改築を重ねることで、改築に伴う縮小営業の機会損失を最小化するという、実を取り競争力を上げる機会にかけるか―この2つの選択肢しかありませんでした。
いずれの道も圧倒的なリスク下になることには変わりはなく、今回、後者を選択したのは当時コロナ第一波の中で旅が不要不急という烙印をおされ、観光の先行きがまったく見えない段階で、お客様の旅への思いを裏切りたくないという意地でした。加えて観光業に対しての希望を当地で形にしたいという青臭い感情もあっての決断でした。
―今回の投資でもっともこだわりを持たれたところは何でしょうか。
個性です。特に白樺湖の湖畔の価値を最大限に活用しようと考えました。当館は白樺湖の湖畔に立地しながら、湖畔の価値を最大限に活かしきれてはいませんでした。湖畔、湖面、山、空とつながるロケーションを最大限活用するために、利用率がほぼ100%となる大浴場からの眺望をまず基本に置いた設計とし、新本館の客室棟も真正面に湖を望む角度に配置換えを行いました。
ただ景色がよく見えるハードを作りたかったわけではなく、むしろロケーション内にホテルのパブリックを溶け込ませるという感覚を大事にしました。白樺湖湖畔からつながって一体感のあるリゾートエリアにテラスを設けてレストランを窓口にしたパブリックスペースを置き“LAKE RESORT”を感じていただける空間時間をホテル内外に設けることにこだわりました。
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