新生・道後プリンスホテルをけん引 佐渡祐収社長に聞く
愛媛県・道後温泉の道後プリンスホテルは昨年9月、創業50周年を迎えたのを機に長きに渡って経営に携わってきた河内広志会長が退任し、佐渡祐収社長が経営のバトンを引き継いだ。公認会計士から旅館経営に転じた異色の経歴を持つ佐渡社長に、新生・道後プリンスホテルをけん引する経営の方針や道後温泉への思いを聞いた。
団体客はブルーオーシャン 宴会場拡充
―ユニークな企画や営業・宣伝に取り組み、道後温泉の名物営業マンとして知られた河内前会長のあとを引き継がれ、この1年いかがでしたか。
ご存じのように、ものすごいキャラクターの持ち主で、彼のジャイアントスイングに私も社員も振り回されてきたのは事実ですが、あのパワーがあったればこそ道後プリンスホテルは大きくなりましたし、継続できたと思っています。
前会長ほどのバイタリティーと営業力があるのだったら道後プリンスホテルだけではなく、もっと複数の旅館経営ができたんじゃないかと思うくらいです。私は公認会計士として様々な経営者を見てきましたが、河内前会長ほどバイタリティーのある経営者はそう多くはいません。
ただ営業への執着力が強すぎて、営業さえしていればいいという片輪走行になりがちで、内政には弱い面がありました。私自身は経営にはバランスが大事だと思っているので、従来の営業8割、内政2割から、営業5割、内政5割へとシフトしてきました。前会長の路線を踏まえながらアナログ業務を改革し、私自身がバランサーとして持続可能性を慎重に見極め経営を進めています。

団体客誘致への意気込みを話した佐渡社長
―経営を受け継がれてからの実績、これからの取り組みについて教えてください。
SNSや口コミの重要性が増すなか大規模旅館でありながら「じゃらん」で総合4・5という高評価を獲得したことが功を奏し、3月の「じゃらん」からの送客による単月売上が全国でトップ10に入りました。これも追い風となりこの3月の総売上高は2億円を達成するとともに、当年度の総売上高は25年ぶりに17億円を超える予想です。
ただ、じゃらんのようなOTAからの個人客の集客も重要ですが、大規模旅館にとって客室の稼働率を考えると、団体客は不可欠です。
昨年11月の土曜日に団体客の中型バス8台が入って驚きました。秋の観光シーズンのピークである11月土曜日になぜ8台ものバスが当館に入ったかといえば、団体客を受け入れる旅館が全国的に少なくなっているためと言えます。
近年の団体客の市場が従前のレッドオーシャンからブルーオーシャンに変化する中で、宴会場を個室処に改修していない当館としては、この市場を獲得するために宴会場をリニューアルし、モダンなつくりに改修しました。リニューアルした宴会場はお膳形式で最大60名、イス・テーブル形式で最大40名まで収容可能で三分割にもできるのでグループやファミリーもターゲットにすることができます。この宴会場をしっかりとPRし団体客から個人客まで幅広く集客していくつもりです。
―旅館が宴会場を縮小させている中、宴会場をパワーアップさせているのはリアルエージェントには朗報ですね。
はい、商談会などでお伝えすると旅行会社やメディアの皆さんは驚かれます。それをきっかけに話が弾むこともあり、宴会場が送客への一つの動機づけになっていると感じています。
団体客といえば修学旅行も受けており、生徒さんはもちろんのこと、先生方からも好評を得ています。修学旅行は将来の旅人口を創るともいわれています。旅館そのものの日常を体験していただき、温泉旅館に泊まりたいと思っていただけるよう、一般のお客様とほぼ変わらない会席料理を提供していますので、先生方からの料理の評価は高いです。当館は大浴場と露天風呂のフロアが分かれていますので、大浴場を修学旅行に貸し切りにしても、その時間帯は一般のお客様に露天風呂をお使いいただくように案内することで双方のお客様が快適に温泉を楽しんでいただけています…
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