旅行業の未来を切り拓け JATA経営フォーラム09
日本旅行業協会(JATA)は2月24日、東京・池袋のホテルメトロポリタンでJATA経営フォーラム2009を開いた。今年の総合テーマは「待ったなし 旅行業の未来を切り拓け」。第2部のパネルディスカッションでは、「危機の乗り越え」をテーマに、富士フィルムヘルスケア事業統括本部ライフサイエンス事業部営業部長の杉本和繁さんと、香港の旅行会社、EGLツアーズ社長の袁文英さんらが話した。
「技術の棚卸し」と「三方よし」
杉本さんは、2000年をピークに写真フィルムの売上高が激減するなか、会社が構造改革に取り組み、フィルム事業の思い切った圧縮と、得意分野への思い切った投資を同時に行ったことを紹介した。
ヘルスケア商品などライフサイエンス部門への投資もその一環で、それらが新商品開拓につながったのは研究所の再編による「技術の棚卸し」だったという。
技術の棚卸しで、なにができるかをチェックし、その結果の1つとして生まれたのが化粧品などスキンケア商品だった。「フィルムの主成分はコラーゲンです。コラーゲンについてなら私たちには70年の研究の歴史がありました」。
現在、写真フィルムの売上高は全体の3%しかないという。この間、スキンケア商品などライフサイエンス関連の売り上げは約3000億円まで伸ばしてきた。将来は1兆円に伸ばすことを目標にしている。
杉本さんは、「やれることは手の内にあります。ないものは出せません。強みを見つけることです」と話した。
EGLツアーは香港ナンバー1の訪日ツアー会社で、日本に年間13万人を送客する。日本以外も含めると年間の取り扱い人数は約30万人で、売上高は175億円。香港に30階建ての自社ビルを持ち、社員の数は650人。袁さんは、03年はSARSショック、04年のスマトラ沖地震を乗り越え、会社をここまで引き上げてきた。
SARSショックについて袁さんは、「香港は終わったと思った」と振り返る。旅客のいない空港、外出しない人たち。そんな状況が1カ月以上続いた。
そんなとき袁さんが目を向けたのが国内旅行だった。東京都の半分ほどの面積の香港で、それまで国内旅行商品はなかった。発売した国内旅行商品は、香港人の外出意欲を刺激し連日満員の盛況だった。
スマトラ沖地震の際には、津波で大きな被害を受けたプーケットへのツアーをいち早く催行した。格安料金で利益はなかったが、プーケットの人たちやタイ政府に感謝された。
今回の経済危機でも、3月のひと月間、32人以上集まれば旅行期間中に、抽選でツアー代金と同額のクーポン券が当たるドキドキ感のある訪日旅行を催行するなど、旅行需要の喚起に工夫をこらしている。
「好きな言葉は三方よしです。危機に直面したときは赤字も覚悟で、お客様や世間を考えます。独り勝ちはダメです。大岡裁きのように三方一両損で乗り切りましょう」。
袁さんは最後、近江商人の理念、江戸の故事で話を締めくくった。