温泉生かした観光まちづくり 有馬温泉観光協会・フォーラム
兵庫県・有馬温泉観光協会はこのほど、神戸市立有馬小学校文化講堂で「観光みらい創造フォーラムin有馬」を開いた。温泉を生かした観光まちづくりのあり方や持続可能な観光まちづくりに必要な財源のあり方について、全国各地の温泉地の事例を交えた講演やパネルディスカッションを行った。
持続可能なまちづくり 「入湯料」で財源確保
初日の基調講演ではJTBの清水愼一常務が「観光地の地域戦略―温泉街再生と旅館」をテーマに講演。
清水常務は「旅館同士が仲のよくない温泉地は衰退している。地域の長老がいて名誉職的に観光協会長がいるところもよくない」と具体的に指摘し、その一方、旅館ホテルの売上げはピーク時の3分の2になっており、旅館が潰れて当たり前の時代を迎えている、と語った。
また「様々なアンケートで1泊の国内宿泊旅行に行きたい人が増えているのに、実際に行く人が少ないのは『行きたくなる旅行』や『泊まりたくなる旅館』を提供できていないからだ」とも述べ、行政や観光協会、旅館、交通機関、旅行会社が協力して観光客誘致に取り組む重要性を訴えた。
続いて「温泉を核にした地域戦略」のテーマで行われたパネルディスカッションでは「湯治文化の再生が大事。1泊の温泉旅行では病気の治癒にはならないがリフレッシュ効果や脱ストレス効果はある」(西村進・NPO法人シンクタンク京都自然史研究所理事長)、「旅館のPRではなく温泉街をアピールしてきた。80数軒の旅館があるが、まとまりのある温泉地だ」(西村肇・城崎温泉西村屋社長、元城崎町長)、「国の温泉研究は終わり、各地の温泉研究所は潰れ、現在は岡山県の研究所が三朝温泉にあるぐらい」(大塚吉則・北海道大学教授)、「外部資本のホテルと既存旅館ホテルのあり方が問われる」(當谷正幸・有馬温泉観光協会長、兆楽)といった意見を交した。
翌日の「温泉まちづくりの財源を考える」のテーマで話した小磯修二・釧路公立大学学長は「入湯税は目的税でありながら一般財源に組み入れられているケースが多い」と指摘したあと、各温泉地の事例を紹介し「独自財源の確保は大事だが安易な財源探しでは失敗する。各温泉地の特徴や優位性を踏まえた取り組み、成果をわかりやすく示すことのできる政策システムの構築が必要だ」とした。
引き続いて行われたパネルディスカッションでは「日本の温泉地の活性化の取り組み」をテーマに由布院、阿寒湖、草津、鳥羽の4温泉の代表がそれぞれの現況を語ったあと、今回のフォーラムをまとめる提言として有馬温泉旅館協同組合の増田晴信理事長が、持続可能な温泉による観光まちづくりに必要な財源として「入湯料」徴収の実現に向けた取り組みを行うことを宣言した。