地域と旅館の新しい関係 全旅連青年部県部長サミット・研修
全国旅館生活衛生同業組合連合会青年部(全旅連青年部、井上善博部長=福岡県原鶴温泉・六峰舘)は9月16日、東京・有明の会議場で今年度2回目の都道府県部長サミットを開いた。主にエコポイント制度と国の観光政策の現状、旅館の生き方について研修した。
エコポイントについては、専門家が政府の発表を基に解説し、業務用のエアコンなどについても省エネラベル4つ星以上であればポイント付与の対象になることなどを説明していた。
観光政策については、観光庁観光地域振興課の笹森秀樹課長が講演したほか、県部長とフロアーミーティングの形で意見交換を行っていた。このなかでは、観光行政が前に進まない状況についての悩みに対して笹森課長が「思いが行政に反映されなければ、要望書を持って市長と面談すべきです。トップを巻き込み、問題意識を共有してください。議会に対しては観光への投資が市民サービスの向上に返ってくることを、データで示すことが有効です」などとアドバイスしていた。
また、パネルディスカッションでは青年部から新潟県越後湯沢温泉・HATAGO井仙の井口智裕さんと、山形県湯野浜温泉・亀やの阿部公和さんが旅館と地域、旅館同業者との新しい関係などについて話した。
阿部さんは冒頭に「売り上げがピークの12億円のときより、8億円の今の方が収益はよくなりました」と変革の意味を説明し、それでも「70室の旅館は地域との連携なしにはやっていけません」と考えを述べた。
しかし、湯野浜温泉は「明日のことが何も決まらない地域」(阿部さん)。そこで、明日がだめならとつくったのが「湯野浜温泉100年計画」だった。地域が目標に向かって歩みを始めた瞬間だったと振り返っていた。
旅館では、東京・赤坂に日本料理店を出店したほか、山形県内の旅館3軒で合同会社をつくり、東京・馬喰町のカフェもオープンさせている。
「旅館は、1泊2食料金の中で料理と室料の関係があいまいです。料理店を経営することで、料理の経費と利益を検証したかったのも狙いです」と阿部さん。旅館3軒では、顧客情報の共有化も予定している。
井口さんは国認定観光圏の1つで新潟、長野、群馬3県にまたがる7市町村で構成する「雪国観光圏」の推進役として奔走している。観光圏にかける思いについて井口さんは「東京から越後湯沢までは、新幹線の往復料金が約1万2千円。宿泊料金を足すと2万4千円程度になってしまい、旅館1軒では同料金の都内のホテルに満足感で勝てません。ですから満足感は地域の魅力に頼るしかないんです」と明快だ。
観光圏までエリアを広げることで食の魅力が広がり、また、地域の伝統食を残す手伝いができると考えている。
「宿が伝統食の価値を伝えなければ、それらはなくなってしまいます。例えば味噌蔵。地域に味噌蔵を残せるのは、味噌のうまさを説明できる旅館です。旅館は宿泊客に対する説得力を持っています。お客様にうまいと言わせながら、伝統食を継承するという意味のあることをしていきたい」と、観光圏と宿について話した。