「世界遺産を訪ねて」 全国産業観光フォーラム・記念対談
群馬県富岡市で10月22―23日に開かれた全国産業観光フォーラムの記念対談では、「世界遺産を訪ねて」と題して、産業観光推進の第一人者で全国産業観光推進協議会副会長の須田寛さん(JR東海相談役)と画家で女優の城戸真亜子が対談した。
須田さんは、フォーラム開催地の富岡市が「富岡製糸場と絹産業遺産群」として、2012年の世界遺産登録を目指しているのを念頭に「産業観光によって地域の顔が見え、地域観光の幅を広げることができます。当地の周辺には、桑畑や蚕の卵である蚕種を夏季に保管した冷蔵施設だった風穴から、製糸工場、絹製品を輸送した鉄道まで残っています。これらを生かしながら、首都圏から多くの人が来るにたるまちづくりをお願いしたい」と要請。ハード面については首都圏から100キロ圏の立地から車利用が主となることを想定した駐車場整備、ソフト面では市民あげてのもてなし精神の発揮を求めた。
城戸さんもホスピタリティについては「ヨーロッパで世界遺産のまちを訪ねると、住民がいかにまちを誇りに思っているかを熱心に伝えてくれます。世界の人が、このまちを好きになってほしいという気持ちが伝わってきます。ぜひ、自分のまちを自慢するくらいの気持ちを持ってください」と語りかけていた。
また、須田さんは世界初の鉄橋が世界遺産となっているイギリスのアイアンブリッジ渓谷を訪問したときの経験から、「鉄橋のまちとして、まちぐるみで産業観光に取り組んでいます」と紹介。「製糸産業というと女工哀史を思い浮かべますが、富岡製糸場は官営模範工場として日本全国に器械製糸の技術を広めるのが役割で、女性従業員に優しい工場だったことをPRしてほしい」と提案した。
そのほか須田さんからは、車で来訪する人について、「日帰りでは埃と排気ガスだけが残されます。宿泊してもらうためのコースや地元の人との語らいの場の提案など、今から準備をしてください」、城戸さんからは「ヨーロッパでは小さなまちにもB&Bがあります。日本でも、子どもが巣立った民家をB&Bとして提供できないでしょうか」などと提案していた。